常識と非常識の境界線を行き来しながら、清く正しく狂う -SUPRAM トヲルさんの習慣 後編-
魚を咥えたモデルさんを撮影するなど、賛否両論を巻き起こす斬新な作品をInstagramや集客・予約サイトで発表し、業界界隈をざわつかせているSUPRAMのトヲルさん。表現のタブーを恐れぬ奇才のイメージを漂わせていますが、話してみるととても紳士な常識人です。今回はそんなトヲルさんをトヲルさんたらしめる習慣を教えていただきました。インタビューは前編・後編の2回、ぜひ前編とあわせてご覧ください!
トヲル流俯瞰の哲学
かなり前から、自分の胸に刺さったフレーズをメモすることを習慣にしています。最近、特に気になっているのは、宣伝会議賞のキャッチコピーです。宣伝会議賞の受賞作には素敵なコピーがたくさんあります。例えば、中部電力をテーマにした「社名が、窮屈になってきました」とか、サントリーの伊右衛門の魅力を伝える「おばあちゃんが、急須を捨てた」とか。
中部電力のコピーは、今は中部地域の電力事業だけでなく、さまざまな地域で、さまざまな事業を展開していることを伝えているのだと思います。これって、会社の中で働いているだけではなかなか気づくことができなくて、ちょっと離れたところから俯瞰したことで見えてきた新しい姿ではないでしょうか。
サントリーの伊右衛門のコピーは、おばあちゃんが急須を捨てるほど、おいしいお茶なんだということが伝わります。「おいしいお茶です」とそのまま表現するよりも、「急須を捨てる」のほうが、インパクトがありますよね。
普通とはちょっと違う角度から見ることで新しい魅力が見えてくることは日常の中でもよくあるし、これって美容にも通じることなんじゃないかと思っています。僕が、普通とはちょっと違う新しい角度から表現することにトライしているのはそのためです。
ただふざけるのではなく、マジメにふざけている
例えば、僕が集客・予約サイトに載せている作品には一つとして普通のものはありません。もちろん、髪はしっかりデザインしていますが、ポージングや衣装、撮影のシチュエーションや、作品のタイトルも非常識です。でもこれはあえてやっています。
集客・予約サイトに出ている作品のどんなものが評価されているのかは重々承知しています。でも評価される王道をあえてハズすことで目立つし、新しい表現の可能性を知ってもらえると思っているんです。
※トヲルさんの最近の作品をいただけませんでしょうか。
モデルさんが階段に横たわっていたり、ラーメンを食べたりしているし、顔が見えない作品も多いです。作品のタイトルも「インスタ見ました」とか「ネトフリユーザー」とか、もはや髪型の名前じゃない。でも、そのほうがおもしろがられて、ネットで盛り上がったりもします。
例えばですけれど、サロンのみんなと一緒に遭難したときに僕が蛍光ピンクのダウンを着て、手を振ることによって見つけてもらえるじゃないですか。で、助けてくれる人が近づいてきたら、ほかにも遭難者がいることに気づいてもらえるというか。
つまり、僕が注目を集めることで、ほかのスタッフの作品にも興味を持ってもらえたらいいなと思っているんです。僕以外のスタッフは、王道のスタイルを含めて、いろんな感性の持ち主がいるので、僕の作品をきっかけに知ってもらえたらうれしいなと思っています。
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