フィルムカメラを操っていると、撮影以外にもプラス効果がある -unplugged前田伸一さんの習慣 後編-
無意識に人の魅力的な面を探すようになる
カメラのレンズを通してしか見えない景色ってあるじゃないですか。その瞬間を止めることや、切り取ることは写真にしかできないと思っています。
カメラを持つようになってから、いつも切り取りたくなる瞬間を探すようになりました。人間ってネガティブなことに目がいきがちだと思います。でも、カメラを持つと、自分が撮りたくなるものを探すから、自然と美しいもの、おもしろいもの、素敵な仕草などに目がいくんですよね。
お客さまへの提案にもいい影響があります。例えば、お客さまが自分の髪や骨格にコンプレックスを持っていたとします。お客さまはどうにかしてコンプレックスを消したい、隠したいと考えるものですが、「どうしたらコンプレックスと思っているポイントを生かせるだろうか」という思考回路が働くようになりました。
いいところを切り取りたいからこそ、コンプレックスを魅力に変えるとか、新しい魅力を引き出すとか、そういう方向性で考える習慣が生まれたのだと思います。
作品撮りでも「奥行き」を感じさせるストーリーを含ませる
フィルムカメラで撮影する習慣は、もちろん作品撮りにも生きています。例えば、ホームページのサロンイメージを伝えるフォトギャラリーの写真はほぼ全て僕が撮影しています。ただヘアを紹介するのではなく、構図づくりにこだわっているんですよ。
撮影するときには、モデルさんがいるシチュエーションや、そのシチュエーションに至るまでのストーリーも考えています。平面的な写真ではなく、なぜモデルさんはそこにいて、何をしているのかという奥行きをつくっているんです。
ちなみに2021年5月のルックは「バンドやってる女の子たちが寝起きで、ドラムとかギターとか持ち出して演奏し始めたら、なんだか朝からノッてきたって感じにしたら面白くない?」と僕から提案したんですよ。
こんな感じでストーリーをすごく考えましたし、一枚一枚の写真にちゃんと理由があるんです。「なぜこのポーズなのか」「なぜこの髪型なのか」など、全てに理由があります。そして、思い描いているイメージをサロンのメンバーと綿密に話し合って撮影しています。
一緒にやっているメンバーも、ストーリーを考えるのが好きなんですよ。「ストーリーはこうだからヘアはこうしたほうがいい」という具合にディスカッションしながらつくっています。
こんな感じで「どの瞬間を切り取るか」という発想になると、作品撮影の楽しみが増えるのでおすすめしたいですね。
- プロフィール
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unplugged
前田伸一(まえだしんいち)
関西美容専門学校卒業後、都内有名サロンで10年間勤務したのち、フリーランスに。サロンワークを軸に、ヘアメイクやフォトグラファーとしても活動。2019年に元同僚2人と『unplugged』を立ち上げる。ファッション、音楽、コーヒーなどへの造詣が深く、unpluggedの空間プロデュースにも深く関わっている。
Instagram:shin.0507
(文/外山 武史 撮影/菊池麻美)
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