誰かの“得意”を伸ばせるのは、多くの本に触れたおかげ -SOCO 関山 善博さんの習慣 後編-
あなたの本棚が、あなたの強みを表している
仕事と直接関係しない本も好きでよく読みます。たとえば、リチャード・ブローティガンというアメリカの詩人。1960年から1970年くらいに広まったビートニクと言われる文学のハシリです。村上春樹も彼らに影響を受けていると言われています。文章は一見するとデタラメで、想像のジャンプ力が激しいんですよね。でも、とにかくかっこいい。いろんな国の文学を読みますが、アメリカ文学は特に好きですね。
このほか僕が影響を受けた本としては、歴史的にも非常に重要な本『夜と霧』。ナチスのホロコーストを生き延びたオーストラリアの精神科医が書いています。死体の山や焼却炉の写真などもあるし、人間の生死が題材です。でも内容を読んでみると意外と前向きになれるんですよ。
とても興味深かったのは、生き延びた人はどんな状況にあっても毎日髭を剃ったり、夕陽を見て感動したりなど、「人間らしさ」を残していたこと。反対に、人間らしさを失った人たちは亡くなった…というようなことが書かれていて、なるほどそういう視点があるんだなと思いました。
さて、ここまで僕が書籍から学んだことや、影響を受けたことが自分の強みになっているとお話ししてきました。これと同じで、その人の読んでいる本を知ることで、なんとなくその人のことが見えてくるものです。それが美容師の場合だったとしたら「じゃあ、そこを伸ばしていこう」と僕は勧めますね。
もちろん、読書が全てだと思っていません。パンクロックが好きとか、70年代のフランス映画に詳しいとか、そういうことでもいいと思う。それらを伸ばせばきっと力になります。
ただし、人の強みを見つけるためには、幅広いジャンルを知らないと無理なんですよね。興味の赴くままに読書して、多種多様な知識、理論、哲学、カルチャーなどに触れてきたことが、今さまざまな場面で生きているんですよ。
- プロフィール
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SOCO
代表/関山 善博(せきやまよしひろ)
都内サロン6店舗や面貸し美容師を経て、2015年9月「SOCO」をオープン。以降2017年12月に「AO」、2018年10月「SUN」を出店。さらに2020年2月、札幌に「ACA」出店スピードと、出店の様子を綴ったブログも美容師の間で話題に。現在はスタイリストのみならず、店舗のグラフィックディレクションも手がける。
(文/外山 武史 撮影/菊池麻美)
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