「非日常に飛び込む旅」で価値観を広げ、日常に感謝する -S. HAIR SALON 植田 高史さんの習慣 前編-
20代前半ですでに月500人以上入客していたという人気美容師、植田高史(ウエダタカシ)さん。人気絶頂の時期にあえて日本を飛び出し、リュックを背負って世界を旅したユニークな経験の持ち主です。帰国後、2003年から南青山で立ち上げたS. HAIR SALONは、大人の隠れ家的サロンとして愛され続けて15年目になります。どんなに忙しいときも旅と遊びを欠かさないという植田さんに、ハサミを置いてサロンを飛び出す理由を聞きました。インタビューは前編・後編の2回、今回は前編です。
超売れっ子がサロンを飛び出し、世界を放浪した理由
僕は若いころから休日は大概どこかに出かけているし、年に数回は旅行や仕事関係で海外にも行っています。20代のころは年に何回かリュックを背負って10日くらいの海外放浪をしていました。旅に出たのは、自分の立ち位置を見直したいと思っていたからです。
美容師の仕事はとても楽しい。だけど、楽しいからこそ、のめり込みすぎて視野が狭くなってしまうこともあると思います。情報過多で目まぐるしく変化する東京で、当時は仕事一辺倒だったから、心身のバランスが崩れているような感じもしたんですよね。
海外という非日常に飛び込むと、自分の暮らしや考え方を見つめなおすことができます。たとえば、貧しい国で日本と同じ格好をしていると、目立ちすぎるし、物乞いの人に囲まれてしまうこともありました。バスのなかに「お金をください」と書いた札をぶらさげた人が入ってくることもあります。つまり、その土地にあった服装でないと、まともに出歩くことすらままならないのです。
そういう国は物価も日本とまったく違っていて、1万円もあれば10日間くらいは余裕で暮らすことができます。東京と貨幣の感覚が全く違うわけです。