どうしようもないバカになって自分の限界をぶち破る -SIDE BURN 太市さんの習慣 後編-
やぶれかぶれで撮った『Crazy Scissors』
音楽に続くクレージー・パフォーマンスは映画。2015年、ブラジルで撮影しました。題名は『Crazy Scissors』。知人にブラジルにこないかと誘われて面白そうだと思ったのがきっかけ。イグアスの滝という世界最大の滝の前で、ギターをかき鳴らしたいという衝動に駆られたんです。で、せっかくならそれを映像に残そうと思いました。カメラマンのパートナーもすぐにみつかり、「滝の前でギターを弾くだけじゃなくて、旅をしながら路上カットもしよう」という具合にどんどんイメージが広がっていきました。決めていたのはその二つくらいで、あとはいきあたりばったり。「もうどうにでもなれ!」という感じで、やぶれかぶれな旅をビデオにおさめました。
ブラジルでの映画撮影は、僕にとっては巨大な肝試しみたいなもの。写真も文章も音楽もなんでもやってきたけど、映画でどこまでやれるか、自分のポテンシャルを確かめたかったんです。最初の構想通りにイグアスの滝をバックにしたギターも、街中での路上カットもやったんだけれど、それだけじゃ「想定内」。スラムとか危ないところにもどんどん首を突っ込んでいきました。だって、安全なところばっかり選んで行く映画なんて面白くないでしょう?「え、そこまでやっちゃうの?」っていう「想定外」がないと、誰も驚かないじゃないですか。作品を観た美容師さんたちも驚いていましたよ。
ちなみに、『Crazy Scissors』を撮るなかで僕の秘密兵器も飛び出しています。それまで人前で踊ることってなかったんだけど、ブラジルなら人の目も気にせずに踊れた。髪の毛を切りまくって、ギターをかき鳴らして、無心で踊り狂う。ブラジルで自分の持っている全感覚を使い果たしたせいで、帰国後は抜け殻状態。しばらく何もやる気が起きませんでした。