飛躍につながった意識「作品に自分の足跡を残さない」 -gem 森川丈二さんの習慣 後編-
美容師のタマゴに伝えたいこと
JHAで賞をとったとか、有名な美容師だからとかではなく、純粋に自分の仕事が評価されるというのはうれしいものです。随分昔の話になりますが、ある専門学校で生徒さんに協力していただき、デモンストレーションをしたことがありました。後日、アンケートをいただいたのですが、そのなかにこんなメッセージがあったのです。
「どうせ今回も大したことないんだろうなと思って見ていました。でも、一人目が終わったとき、『おっ?』と思いました。二人目のときにはぐいっと体を前に乗り出していて、三人目のときには、最前列で必死に見ていました。こんなことなら最初から一番前にいればよかったです」
読んでいて熱い気持ちになりました。僕のことなんて何も知らない子が、デモンストレーションを見て心を動かしてくれたことに感激したのです。
これは美容専門学校にお邪魔したときによく話すのですが、美容師は有名になれるし、お金も稼げる可能性のある仕事だよと伝えています。そのどちらも手に入らないこともありますけれど、両方手に入ることもある。でも、有名な美容師さん、稼いでいる美容師さんが素晴らしいというわけではありません。仕事の本質は喜びを生み出すところにあるからです。
評価ばかりを求めてはバランスを崩します。お金ばかり求めてはお客さまが離れていきます。常にニュートラルであること。仕事の本質を見失わないこと。これが美容師のタマゴたちに伝えたいメッセージですね。
- プロフィール
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gem代表
森川 丈二(もりかわ じょうじ)
1988年資生堂に入社。数多くのTVコマーシャル・広告のへアメークを手掛ける。同時に「MASA」のメンバーとしてPARIS・NY・東京コレクションでのヘアメークや様々な雑誌・ヘアショー・セミナーなどの活動を国内外で担当。1996年には、JHA(ジャパン・ヘアドレッシング・アワード)においての、最年少グランプリ受賞の他、最優秀ロンドン賞2回・準グランプリ2回など 数々の受賞暦を持つ。2006年4月原宿に『gem(ジェム)』をオープンし、Hair&Makeupとして雑誌・広告・TVCF・SHOW・セミナーなどの仕事と共にサロンワークでも活動中。
http://gem-hm.com/index.php
(取材・文/外山 武史 撮影/菊池 麻美)
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