世に残るのは、鬼気迫る想いと熱量を込めたモノだけ -資生堂 原田忠さんの習慣 前編-
ディテールにこだわるとは、髪1本も妥協しないこと
ふりかえってみると僕は、美容と直接関わるモノというよりは、もっと飛躍しているモノに惹かれている気がします。誰も気づかないんじゃないかと思うくらい細かな部分へのこだわりや、作品から伝わってくる尋常ではない熱量や想いとかを感じたとき、「ここまでやりきっていいんだ」と応援されている気になる。自分の頭の中にあるモノを超えるきっかけをつくってくれます。
ディテールをおろそかにしないというのは、僕らの世界も同じだと思います。一本一本の髪の毛の質や艶を高めながら、微細な動きをコントロールしていく。そこをおろそかにすると、やはり美しさが失われると思います。
僕にとってディテールとは、髪1本の表現をさします。編み込みのピースをつくるときも、手の感触で10本なら10本と頭の中で確認しながらやっている。ものすごく根気が必要です。
無心で突き進むこともあれば、自分の中にある葛藤や孤独と戦いながら手を動かすこともあります。「あと何分続くんだろう」と思うこともあるけれど、必ず完成したイメージが頭の中にある。ある意味修行僧のような気持ちでひたすらそこに向かっていくことですべてが報われると信じている。
苦しいときも、先人たちの優れたクリエイションが、「大丈夫、もっとできる」と、僕の背中を押してくれるんです。
- プロフィール
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ヘアメーキャップスクールSABFA 校長
資生堂トップヘア&メーキャップアーティスト
原田 忠
2000年資生堂入社。資生堂の宣伝広告のヘアメークを中心に、NYやパリ、東京コレクションなどでも多岐にわたり活動。資生堂UNOではヘアディレクターとして商品開発にも携わる。
世界的ギタリスト布袋寅泰やももいろクローバーZなどのCDジャケット、ミュージックビデオなどのビジュアルアートワークにビューティーディレクターとして深く関る他、人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』、『テラフォーマーズ』(集英社)のキャラクターをヘア&メーキャップとファッションで 3 次元化するなど、ビジュアル表現による無限の可能性に挑戦・発信し、国内外から高く評価されている。2016年4月、ヘア&メーキャップスクールSABFA校長に就任。著書に「一流のボディケア」(PHP出版)がある。2004年・2012年にJHAグランプリ受賞。
原田忠オフィシャルHP: http://hma.shiseidogroup.jp/harada/
(取材・文/外山 武史 撮影/菊池 麻美)
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