美容師のセンスは「刻み込み」で決まる -DaB八木岡聡さんの習慣 後編-
美容業界誌のなかに「デザイン」というキーワードが出てきたとき、かなりの高確率でDaB代表の八木岡聡(やぎおかさとし)さんの名前がその近くに現れます。今回は、数々の美容コンテストで審査員長を務め、さらにはインダストリアルデザイナーとしても活躍している八木岡さんの習慣に迫りました。インタビューは前後編の2回。今回は後編です。
心の振り子に触れた理由を分析する
僕はいつも「作り手の視点」で物事を見ています。たとえば、テレビコマーシャルを見たとしますよね。すると、自分だったらタレントのヘアはどうするかとか、演出はどんな風にするのかとか、どんなマーケットに当てていこうとか、置き換えて考えるんです。これは自分の好きなもの、興味があるものだけではなく、違和感を抱いたものも含めます。僕の心のなかには「振り子」があって、それが触れたものには何かヒントが潜んでいることが多いのです。
ハイグレード、ハイデザイン、ハイバリューが僕の中でのテーマですが、そのベクトルから外れるものも、振り子に触れたのなら見届けないといけないと思っています。なぜなら、売れるものを作っていくためには、適度なポピュラリティを持っておく必要があるから。それに、僕がすぐに消えると思っていたものが、世の中に受け入れられることもあります。自分の感覚が間違っていることもあるんです。そこに学びがある。
打合せなどが重なって時間が読めないとき、コンビニのお弁当を食べることがあります。このときもいろいろ考えます。最近はコンビニグルメもクオリティが高くて本当に美味しい・・・。一方で、ほどほどだなと思うものもある。「これは本当に支持されているのかな、僕の感覚が間違っているのかな」とか、「同じコンビニなのに、家の近所にこの商品がないのはなぜだろう」とか、そんな感じで分析しているうちに食べ終わっちゃうのがいつものパターンです。