凡人の自分を完全否定! アイディアを却下し続けた先に革新がある -stair:case 中村太輔の習慣 後編-
思いつきのアイディアでは感動を起こせない
パッと思いつくような無難なアイディアや、コンサバなデザインの提案は、失敗するリスクが少ないんですよ。お客さまからしても、大きな不満はないと思います。安全なことだけやっていれば、クレームにもならない。それをコツコツと続けていくことで、それ相応のお金ももらえます。
でもね、ものすごく喜んでもらえるということにはならないと思うんですよ。
僕はお客さまを劇的に変えたいし、「こんなの初めて!」と感動させたい。自分の根本にあるのは、その気持ちなんです。思いつきのアイディアでは、感動まで持っていけないんですよ。
最初のころは、アイディアを掘るのがキツかったです。新しいことには失敗のリスクもありますし。新しいことをお客さまに協力してもらって試すなんてときはもうドキドキ。でも、それがうまくいくと、引き出しが増える。この連続が、自分を成長させてくれました。
美容師が一番恐れるのは、お客さまに嫌われることだと思います。だから、アイディアが縮こまるのもよくわかる。慣れている仕事が一番、失敗の確率が低いです。でも、時代がどんどん変化していくなかで、現状維持は衰退と同じ。
「前回と同じで」と言われたとき、自分に何ができるのか。楽な方に流れる自分を否定することが、自分の引き出しを増やし、成長することにつながるのだと僕は思っています。
- プロフィール
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中村 太輔 (なかむら だいすけ)
ヘアカラー業界の先端を走り続けてきた、日本屈指のトップカラーリスト。カラー剤の開発や国内外でセミナーを行うほか、各コンペティションの審査員も長年務めている。色彩を巧みに操る高度なテクニックとセンスで、国内外に熱烈なファンを抱える。十八番は、来店ごとに色を継ぎ足し、年月の経過とともに奥行きを与え続ける多色染め。白髪を隠すための染髪ではなく、白髪をデザインの一部として利用する”テクニカルグレイヘア”も、絶大な支持を集めている。
https://staircase-ginza.com/
(文/外山武史 撮影/菊池麻美)
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