仕事に手がつかず破滅寸前!? 業界最高峰カラーリストがハマった沼の話 -stair:case 中村太輔の習慣 前編-
カラーの深い沼からは、多分一生、抜け出せない
ヘアカラーの世界も、深い、深い沼です。どこまでやっても終わりがない。どんどん新しい薬剤が出てくるし、自分が求めているものを本当に実現できているのかなと思うと、まだまだ全然、たどり着いてないと思います。
もっと美しい色を出せるし、技術的にも伸びしろがある。独立して経営にも携わるようになりましたが、まだまだ現場から離れられません。でも、だからこそカラーリストは面白いのかなと。
カラーの専門家として20年以上やってきて、「普通の美容師と、カラーリストの技術は何が違うの?」という問いにずっと向き合ってきました。カラーリストを名乗り、カラーにこだわりがあっても、結果が変わらなかったら意味がない。「自分にしかできない仕事は何だろう?」と突き詰めてきました。カラーリストになってから最初の10年間は、自分が突き抜けることしか考えていなかった。「この仕事を日本で認知させる」ことが夢でした。
それが、30代に入り「日本中に素敵なヘアの人があふれるような環境をつくる手伝いがしたい」という夢に変わった。いつか自分が引退したとき「旗振り役は中村さんだったよね」と言われるような活動をしたいです。
自分一人の頑張りではやれることに限界があります。自分の技術を伝えたり、夢に共感してくれる人を集めたりすることが必要。だから、今はスタッフをはじめとして、いろんな人を巻き込んで活動しています。カラーの沼からは一生、抜け出せそうもないです。
- プロフィール
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stair:case
中村 太輔 (なかむら だいすけ)
ヘアカラー業界の先端を走り続けてきた、日本屈指のトップカラーリスト。カラー剤の開発や国内外でセミナーを行うほか、各コンペティションの審査員も長年務めている。色彩を巧みに操る高度なテクニックとセンスで、国内外に熱烈なファンを抱える。十八番は、来店ごとに色を継ぎ足し、年月の経過とともに奥行きを与え続ける多色染め。白髪を隠すための染髪ではなく、白髪をデザインの一部として利用する”テクニカルグレイヘア”も、絶大な支持を集めている。
https://staircase-ginza.com/
(文/外山武史 撮影/菊池麻美)
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