アクセルを踏み込む前に、勝負は大方ついている -Double 山下浩二さんの習慣 前編-
レースも美容も「セット」が命
カートレースは、わずかコンマ1秒の間に10人がひしめき合うような世界なので、勝つためのちゃんとした準備が必要です。まず、レースが開催される日のコースの路面状況を把握し、それにあったタイヤのトレット(タイヤからタイヤまでの幅)、空気圧、シートの位置などを考えてセッティングします。レースが始まる前に、カートの状態をベストにもってくる作業ですが、業界ではこれを「セットを出す」と言っています。
これがかなり奥深くて、ミリ単位で調節します。タイヤの空気圧一つとっても、繊細な調整が必要なんです。空気圧が高いとグリップ力が増しますが、高すぎるとレースの後半ではタイヤに熱がこもってグリップしなくなってしまいます。だから、レースの勝負所で、グリップ力をベストの状態に持ってこられる空気圧を探すのです。
勘のいい美容師さんはもう気づいていると思いますが、これって美容師の仕事ともよく似ているんですよね。コースが変われば路面状況が変わるのと同じで、お客さまの髪は一つとして同じではありません。同じお客さまでも日によって髪の状態が異なります。
パーマがうまくかからなかったとき、パーマ液が悪いのか、カットが悪いのか、それとも作ろうとしているスタイルに無理があるのかなどいろいろな原因が考えられます。反対に言えば、それらすべての条件をしっかり整えてあげることで、いい髪型ができるわけです。美容もカートと同じで、データを集めて「セットを出すこと」が欠かせないんですよ。