人一倍、努力を続ける天才〜「EGO sette」豊田笑子さんの仕事の流儀
ピンヒールがトレードマークの「EGO sette」スタイリストの豊田笑子(えみこ)さん。「ヒールは小指の骨が折れるのでは、と思うほど痛いことも。でも五感を通り越して第六感まで意識をはりめぐらせているので、仕事中は痛いという感覚はありません」と笑顔で語ります。通常3年かかるスタイリストデビューを、10ヵ月で果たし、25歳にして「オズモールアワード2019」指名数部門第3位を獲得。その栄光の裏には、人一倍の努力がありました。師匠の「EGO sette」代表、吉田ケンさんにも特別出演していただきながら、仕事に対する思いなどうかがいました。
美容師は「美髪師」ではなく、その人本来の「美」を引き出す達人
美容師になったのは、母親が美容師だった影響もありますが、「美容が大好き」というより、「人が好き」だったからです。人をきれいにして、イキイキと変化していく姿を見ると、うれしくなるんです。人の美しさを引き出す方法はいろいろありますが、やはりヘアスタイルを変えることが、一番効果的ではないでしょうか。
もともと、美容師の仕事とは、表面的に髪型を整えるだけではなく、もっと人間的にお客さまと関わることだとを感じていましたが、そうした自分の思考がより明確になったのは、「EGO sette」代表の吉田と出会ってからです。
就職活動で働きたい美容室が決まらないでいたとき、専門学校の先生から、「『EGO sette』の吉田さんに一回会って話してみるといいよ」と紹介されたのが、吉田との出会いのきっかけです。はじめて会ったとき吉田が、「美容の『容』とは器という意味もある。今、美容師の多くは、『美髪師』になっている。でも本物の美容師は、内面も含めた人間の『器』を美しく整える人だ」と語ってくれて、衝撃を受けました。
「人間の器」を整えるにはまず、お客さまの雰囲気や目の色を見て、どういう人なのかな、今日はどんな1日を過ごしたのかな、など、その人となりや心情を読み取ったうえで、疲れた気持ちをいかに癒して差しあげるか、いかに本来の自分自身を取り戻していただくかを考えること。女性はとくに、気持ちが外面に現れるので、お客さま本来の内面と向き合い、元気を取り戻すことが大事であると教わりました。
そして、ひとりの人間としてお客さまに真摯に向き合おうとする姿勢は、相手に自然に伝わるということも……。吉田の話を聞き、「私のやりたかったことはこれだ」と気づいて、「ついていくなら、この人しかいない!」と、「EGO sette」で働くことを決めました。