3年後に独立の道も!? 時枝弘明さんが語る「stair:case」のスペシャリスト教育改革

期限があるという危機感が、学びの濃度を濃くしてくれる

 

 

—オープン当初のスタッフ募集の時点から、「3年後の独立」を謳っていらっしゃいます。これはすごく珍しいように思うのですが。

 

3年後というのは中途採用のスタイリストの場合ですが、新卒採用でも5年後には自分で店を構えられるまでになることを目指しています。早いと思われるかもしれませんが、あまり先過ぎる未来を提示しても夢が薄くなると思うんですよね。3年や5年であれば、現実的な目標になると思いますし、実際可能だと考えています。

 

完全な独立の他に、グループ店としての独立という道筋もあり、バックアップ制度はすでに整え済みです。スタッフたちに豊かな暮らしをしてもらいたいし、美容師という職業が夢のあるものであってほしい。そういう思いでオープンの時点からこういった制度も充実させることにしました。

 

—とはいえ技術を深めていくことと、早い独立を両立させるのは難しいように感じてしまいます。

 

長い時間をかけて丁寧に育てるというのとは逆の発想です。技術に関しても経営に関しても、経験しなければわからないことがたくさんあります。美容師の仕事は、経験と失敗の繰り返し。早い段階ではじめれば、もし失敗をしても取り返すことが可能です。また期間が短いとわかっていれば、いい意味で危機感を持って日々の仕事や練習に取り組むことになります。それが成長の濃度を濃く、早くしていきます。

 

技術に関してはベースの技術を身につけさえすれば、あとはサロンワークを必死にやる中で自分自身の力で深めていけるはずです。その姿勢、方法を僕らがサロンワークを通して見せていきます。

 

 

技術をすべて見せるオープンスクールも構想中

 

 

—サロンの外に向けての教育にも今後力を入れていくと聞きましたが、どんなことを予定していますか?

 

今考えているのは、サロンワークに参加してもらい、現場で技術を見て学んでもらう形式のアカデミーです。合宿のような感じで、一定期間『stair:case』で働いてもらうことを予定しています。セミナーやWEBの動画は見て学ぶことはできますが、実際に髪に触れることはできないですよね。でもやはり触って感じるというのが、一番の勉強になると思うんです。

 

またお客さまとのコミュニケーションからベストな施術を導き出す方法や、薬剤の選定までの道筋、一瞬のヘアチェックなど、セミナーでは伝えられない部分も、サロンワークをともにしていれば見てもらうことができます。そういったことを隠すことなくすべて見ていただく、真にオープンな教育を外部に向けてもしていきたいと思っています。

 

—サロン内のスタッフだけでなく外に向けても積極的に技術を伝えていくのは、どのような思いがあるのでしょうか。

 

やはり使命感ですね。ここまで技術を究めてきた僕らが、今できることは技術を伝承していくことだと感じています。もうサロンごとに技術を隠す時代ではないですし、学びたいと思ってくれる方が全国にいるならば、できる限りオープンにして伝えていきたい。それを受けて次の世代の人たちが、さらに技術を進化させていってくれたら業界全体の底上げにもつながってうれしいですよね。

 

もちろん僕自身も今後も技術を追求していきますし、70歳までは現場に立ち続けたい。深化させていきながら、進化のきっかけを伝え続ける。これがこれからの僕の仕事だと感じています。

 

 

 

プロフィール
stair:case
アートディレクター・スタイリスト/時枝弘明(ときえだ ひろあき)

神戸市内1店舗、都内2店舗を経て、2003年に『asia』をオープン。同サロン解散後、2012年にトータルビューティサロン『uka』のクリエイティブディレクターに就任。契約満了を期に2018年2月、カラーリスト中村太輔氏とともに東京・銀座に『stair:case』をオープン。国内およびアジア圏にて、数多くのパーマセミナーを行い、ヘアメイクアップアーティストとしても幅広く活躍する。

 

 

(取材・文/福田真木子 撮影/河合信幸)

 

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