ヘルニアや手荒れ、腱鞘炎で労災は降りる? 美容師が労災保険で知っておくべきこと
不注意の怪我もOK? 労災認定される具体的なケースを解説!
「業務内容と怪我や病気の因果関係を証明できること」が、労災認定のポイントであることが分かりました。しかし、日々の業務の中で「これってどっちなの?」と思う、微妙なケースもあります。そこで、美容室で起こりうるシュチュエーションを例に挙げて、労災認定されるかどうかを榊さんに教えてもらいました。
◆◆◆Case1◆◆◆
カット中にハサミで自分の指を切ってしまった!
「怪我と業務内容の関連性が明確なので、労災認定されやすいと言えるでしょう。似たケースだと、フロアに落ちている髪の毛で滑って骨折してしまった、自転車通勤中に事故を起こして怪我してしまった、業務中に自分のミスで火傷をしてしまった、などがあります。
このとき、自分の不注意だったとしても労災認定されることを覚えておきましょう。ただし、お客さまとの口論のあとに殴られた、というときはケースバイケース。売り言葉に買い言葉で、こちらも攻撃的な発言をした場合は、労災認定されない場合もあります」(榊さん)
◆◆◆Case2◆◆◆
営業終了後のカット練習中に怪我をしてしまった!
「その練習が任意参加だったのか、強制参加だったのかによって判断が分かれます。強制参加であった場合は『業務』扱いとなり労災認定されやすいですが、任意参加の場合は業務ではないとみなされ、認定される可能性は低くなります。
任意と強制の境界線を明確に区別することはできませんが、例えば直接参加を命じられていなくても、参加しないと評価が下がる、無言の圧があっていづらくなる、などの状況であれば強制的なものだと見なされることもあります。
似たケースでは、休日のモデルハント中に事故にあった場合。完全に自主的な場合は労災の対象にはなりませんが、ノルマがあったり、見つけてこないと評価に影響があったりする場合には『業務』とみなされ、労災扱いとなります。
モデルハントやカット練習は、参加が慣習となっているケースも多くあります。どの程度強制力があったかが、判断のポイントとなります」(榊さん)
◆◆◆Case3◆◆◆
忘年会の帰り道、転んで骨折してしまった!
「忘年会の帰り道は、『通勤』とは見なされないため、労災認定される可能性は低いです。原則として業務後の時間や、休憩中に起きた事故は労災として認められません。
ただし、例えば『帰り道で誰かを送っていくよう命じられた』などの指示を受けていた場合や、休憩中でも美容室の設備に問題があって怪我をした場合は、労災認定される可能性が高いです」(榊さん)
◆◆◆Case4◆◆◆
長時間労働やパワハラなど、労働環境のせいでうつ病になってしまった!
「うつ病などの精神疾患の場合も、病気と業務の関連性がポイント。厚生労働省が発表しているパワーハラスメントの定義や、過労死ラインを超えていないかどうかが基準になるので、自分の職場環境と照らし合わせてみるといいでしょう。当てはまっている場合は、労災認定される可能性が高いです」(榊さん)
※過労死ライン:健康に害を与えるとされる時間外労働時間の目安。1ヵ月単月で100時間または2ヵ月〜6ヵ月に渡って1ヵ月の平均時間外労働時間がおよそ80時間を超えた場合と言われる。
>>厚生労働省が公表しているパワーハラスメントの定義はこちら。
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