初心を忘れず、一期一会を紡ぐ 歴史ある名門サロンで志高く、走り続ける原点 PEEK-A-BOO栗原 貴史のコトダマ
戒めの言葉「お客さまが切りたいと思った時に、切れる勇気と技術を持て」
先輩美容師に言われた言葉です。美容師になってから、お店が忙しかったり、自分では「切らない方がいい」と思ったり、切る勇気がない時など、お客さまが「切りたい、変えたい」と思うタイミングでカットしなかった事がありました。
後日、そのお客さまは僕の先輩に予約を入れてバッサリカットしました。
どんな時でも、お客さまは何かを「変えたい」と思って美容室に来ています。「マイナーチェンジなのか?」「劇的なスタイルチェンジなのか?」など想いはさまざまです。自分がどんなに忙しくても、どんなに厳しい状況でも、お客さまはそんなの関係なく、変わるための時間を楽しみに来ている。カットできる勇気、技術、個別対応などを改めて強く意識する機会になりました。
指揮者・小澤征爾の言葉「心を打つ美しさとは、少し悲しみの味がする」
感情というのは喜怒哀楽だけではなく、悲しみ一つとっても、泣き喚きたい悲しさ、胸の奥にグッとこらえる悲しさなど、無数の種類があります。
喜怒哀楽のそれぞれで、さまざまな感情を体験した人でなければ、生まれないものがあるんです。何も感じない人生を送ってたら、その人の作るものは無味無臭になってしまう。周り道に思えてもありとあらゆる経験を通じて、感情を揺さぶられたからこそ、その人の人生の厚みが増し、その人にしか出せない音色が生まれる。特に日本人の曖昧なニュアンスはたくさんの経験がないと生み出せないものなんですよね。
小澤征爾さんは音楽の世界の人ですが、僕たち美容師にも同じことが言えるんじゃないかなと思います。
映画『フォレスト・ガンプ』の主人公に胸打たれた「一期一会」
人との出会いは、一生に一度しかないかもしれない。だからこそ、その瞬間瞬間を大切にしたい。「一期一会」という言葉を知ったのは中学生の頃、ことわざのポスターで目にしたのが最初でした。その後すぐに映画『フォレスト・ガンプ』を観たんです。二つのことが重なり、一期一会という言葉が私の中で特別なものになりました。
映画を見たとき、本当に人生には何が起こるかわからないと感じました。どんな出会いが自分の未来を変えるのか、それは誰にもわかりません。僕らの仕事もまた、そうした偶然の積み重ねで成り立っているように思います。
映画『フォレスト・ガンプ』の主人公は、ハンディキャップを抱えながらも、ひたすら前向きに生きていました。周囲からは「かわいそう」と思われたり、いじめの対象になったりすることもあったと思いますが、彼自身はそれをあまり気にせず、ただひたむきに生きていました。
その結果、周囲の人々が自然と彼に惹かれていく。そんな姿に、幸せとは何か、日々をどう生きるべきかを教えられた気がします。