キャバ嬢時代に言われた「あの一言」がなかったら今の私はいなかった Men’s hair NoN 恵比寿 石井 沙季のコトダマ

お客さまの言葉「ここはパワースポットみたいだね」

 

 

サロンにきたお客さまから「髪を切った後、彼女ができました」とか、「明日の結婚式に備えて切りにきました」などと言ってもらったとき、とても嬉しくなります。人生の大事な場面で任せてもらえることが誇らしいです。

 

「ここはパワースポットみたいだね」と言ってくださるお客さまもいるんですよ。2週間に1回、どこも切るところがないのに来てくださるお客さまもいます。髪を切ることじゃなくて、このサロンに来ることを目的にしてくれているんですよね。

 

 

私は常々「推しがいるヘアサロン」をつくりたいと思っているんですが、少しそれが実現できている気がします。髪を切ることだけが目的ではなく、純粋に会話を楽しむとか、空間を楽しむとか、他のヘアサロンにはない魅力をつくっていきたい。それがお客さまが本当に求めているものだし、ヘアサロンを選ぶ理由だと思うんですよ。

 

あしながおじさんの言葉「美容師を諦めるな。応援してきた意味がなくなる」

 

 

私は1年間限定でキャバクラで働いたことがあります。そこでお金を貯めて美容師に戻ることが目的でした。私を指名してくださるお客さまにも、美容師に戻る話をしていたんです。

 

もうすぐ美容師に戻るというタイミングで、「今の生活のままのほうが楽しいし、ラクだし、美容師なんて絶対しんどいからなんだかやりたくなくなってきた」という話を、馴染みのお客さまにしたことがありました。

 

そうしたら普段は優しいお客さまが真剣に怒ってくれたんです。「今のままだと絶対に後悔する。絶対に美容師をしたほうがいい。ここで美容師を諦めたら、応援してきた意味がなくなる」と。

 

その一言で目が覚めたし、応援してくれたお客さまの恩義に報いたいと思ったんです。振り返ると私は、ずっと人に支えられて生きてきた人生でした。支えてくれたのは、お客さまだったり、先輩だったり、今一緒に頑張ってくれているスタッフだったりします。

 

 

応援してくれたお客さまは私の「あしながおじさん」のような存在です。今もわざわざ遠くから私のもとに来てくださいます。だから、私は人に対してすごく感謝しているし、恩返しをしていきたい。心からそう思っています。

 

プロフィール

『Men’s hair NoN 恵比寿』代表

石井沙季(いしいさき)

神奈川県生まれ。都内の美容専門学校を卒業後、人気サロンに就職するものの1カ月で退職。その後、異業界を経て再び美容業界に復帰。大型店を経て都心のサロンに転職。そこで圧倒的な練習を重ねてメンズヘアにシフトし、毎月300名以上の施術を担当する人気スタイリストへと成長。2023年4月にMen’s hair NoN 恵比寿をオープン。

Instagram: @ chaki_0123

TikTok: chaki.biyoushi

 

(文/外山武史 撮影/菊池麻美)

 

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