ヘアデザインの枠を飛び越えたクリエイター nenenイッシキケンタを進化させたコトダマ
第一線で活躍する美容師の人生を変えた「恩師の言葉」を紹介する「美容師のコトダマ」。今回は、ヘアコンテストの上位入賞常連のクリエイティブ美容師であり、nenen代表であるイッシキケンタさんのコトダマを探りました。地方から上京して成功したいと考えている美容師さんにぜひ読んでいただきたいお話が満載です!
「キャプテンとしてお前はこのままでいいのか。チームをどう率いるんだ」
僕の地元は京都の名所、天橋立のすぐ近くです。中学も高校もみんな同じ学校に通っているような小さな田舎町で育ちました。それでも、バスケットボール部は、地区大会で毎年優勝するほどの強さだったんです。
毎年3年生が引退すると、次のキャプテンを選ぶ文化がありました。僕はバスケが特別上手いわけではなかったけれど、先輩から可愛がられるタイプだったのでキャプテンに指名されたんです。
でも、キャプテンなのに最初はレギュラーになれませんでした。しばらくの間、キャプテンなのに試合に出られないことが続き、ヤンキー上がりのようなコワモテの顧問の先生に「キャプテンとしてお前はこのままでいいのか。チームをどう率いるんだ」と言われたんです。正直、今振り返ると「中学生を相手に酷な質問をしてくれたな」と思うんですけれど(笑)。
仕切るのがあまり得意ではなかった僕は、どうすればチームを引っ張っていけるのか悩んだ末、「誰よりも練習してボールを追いかけます」と宣言しました。それからは毎朝5時に起き、自転車で10分ほどのバスケットボールコートで練習し、夜も部活の練習後、家に帰ってから公園で練習しました。先生は、夜に車で見回りをしているとき、僕の姿を見つけて見守ってくれていたそうです。
平日では飽きたらず「日曜日にも練習したい」と伝えたところ、先生は体育館の鍵を渡してくれたんです。体育館の鍵を生徒に渡すなんて、本当はダメですよね。でも先生は僕の熱意を折らないために覚悟を決めて渡してくれたのだと思います。それからは日曜日も体育館でこっそり練習。やがて、徐々に一緒に練習するメンバーが増え、僕もレギュラーになり、最後にはスタメン入りすることができました。
これが僕にとって大切な成功体験となりましたし、リーダーとしての原体験にもなりました。バスケ部顧問の先生の言葉は、今も僕の心に刻まれています。だから僕は、サロンの代表になった今も、誰よりもスタイルを創り続けているんです。