エザキヨシタカ率いるgricoの歴史を塗り替える男 寺尾フミヤの力を120%引き出すコトダマ
「あなたは特別厳しくしたから」
関西美容専門学校に僕の恩師がいます。2年生の担任で、厳しいことで有名な名物先生。最近は丸くなったという話も聞きますが、僕らが学生のころは怖すぎて、誰もが恐れる存在でした。
今も忘れないのは、2年生の初っ端に担任の先生が教室に入ってきたときのこと。みんなが心の中で「マジかよー」と言っているのが聞こえてくるような空気でした(笑)。
そんな感じでめちゃくちゃビビられている先生なんですけど、卒業生はみんなその先生のもとに挨拶に行くんですよ。卒業してから先生の厳しさの意味がわかるんですよね。間違いなく人を成長させる先生なんです。
当時、僕はクラスのまとめ役をしていたこともあり、自分のことだけではなく、クラスメイトが課題をやっていないとか、そういうときも叱られるんですよ。まだこれは「自分の働きかけが足らなかったな」っていう感じで理解できました。
さすがに辛かったのは、僕が技術の大会に出場中で学校にいなかったときのこと。その間に起こった出来事を、僕の責任であるかのように言われたときです。学校にいればまだなんとかなるけど、大会に出場中だった僕はどうにもできないじゃないですか。そのときは理不尽だと思いましたが、改めて考えると「その場にいなくても影響力を与えられるくらいの存在になれ」という意味だったのかなと思います。
先生が僕に対して特別厳しかったのは、卒業後に東京のgricoで働こうと考えていることを知っていたから。当然、東京の有名店には優秀な美容学生が集まるし、その中でも活躍できるのは一握り。厳しい世界で勝ち上がっていくためには、困難を乗り越えられなければならないし、さらに上を目指すためには、周りに影響を与える力も必要だと思います。東京の美容室を目指す僕のために、特別厳しくしてくれていたのでしょう。
gricoの採用試験の作文を書いて、先生に見てもらったとき「これじゃ見た人に何も刺さらない」と言われて何度も書き直したこともありました。「そこまで言うか!?」と思ったこともあったけれど、言っていることは全て正論だから言い返せなかった。だけど、厳しくズバズバ言ってくれる大人がいてくれて幸運だったと思います。自分の弱さや課題に気づかせてくれましたから。