美容師のコトダマ 壁にぶつかったとき不安を消してくれる言葉「笑っていれば大丈夫」 ABBEY2 久保梨沙さん

「梨沙が盗る側じゃなくて盗られる側の人でよかったよ」

 

 

私の父は九州で美容室を経営しています。その父の言葉もたくさん私の心の中に残っています。忘れられないのは美容専門学校のとき。学校にあった私の化粧ポーチが無くなってしまったんです。化粧ポーチは当時の自分にとって一番高額で、自分では買えないものもたくさん入っていました。周りのみんなが「なんでないの?」って心配してくれたんですが、私は「大丈夫、大丈夫」と平気なふりをしていたんです。でも、本当はめっちゃショックで。

 

私は絶対に人前で、文句や泣き言や愚痴など、マイナスなことは言わないと決めていました。ただし、家族は例外なので、泣きながら父に電話しました。「誰かに化粧ポーチを盗られてしまったけど、誰にやられたかわからない」と。すると父は、そうかそうかと嬉しそうに笑いだして、なんで笑ってるの?と私が怒ると、

 

「いや、パパはよかったよ。梨沙が人のものを盗るような人じゃなくて、盗られる人で」

 

って言ったんです。本当にその通りだなと。父にそんな風に思ってもらえたことが嬉しかったし、出来事の捉え方で見える世界が変わるんだなと実感しました。

 

 

私が“人にされて嫌なことをされる原因をつくらない”と決めているのも父の言葉の影響です。学生のころ、父に買ってもらったエナメルの鞄を大切にしていたのですが、兄弟がベタベタ触ろうとしてきたんです。触られるとエナメル部分に指紋がつくじゃないですか。それが嫌でよく揉めていたんです。

 

その様子を見かねて、父が「人に触られるとムカつくんやろ?だったら先に自分で触っとき!ムカつくような状況を自分で作っちゃだめだよ!」と。

だから私は今でも嫌な事があると、「あー自分があの時こうしなかったから、私が悪いか!」と思えるようになりました。

 

父からは他にもたくさんの言葉をもらっています。数年前の誕生日には父から本が届きました。父が私のために自分で書いたった一つの本で、1ページ1ページ私への言葉が詰まっています。ことあるごとに読み返すとその時々に元気をもらえたり、考え方を改められたりする、その言葉の一つひとつが宝物です。

 

 

プロフィール

ABBEY2 店長/ 久保 梨沙 (クボ リサ)

福岡県出身。ハリウッドワールド美容専門学校卒業。ABBEY代表の松永氏に惹かれて上京し、他社の内定を断り、ABBEYに入社。5年のアシスタントを経てスタイリストデビュー。2017年に副店長、2019年に店長に昇格。父親は福岡県にある美容室「BAGZY」の経営者、久保 華図八(クボ カズヤ)氏。

 

文/外山 武史 撮影/菊池麻美)

 

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