美容師のコトダマ “臨機応変を捨てた” “早さは優しさ” 豹柄美容師を動かした恩師の言葉たち air-GINZAスタイリスト 中村有佑さん

「アンタなんかに紹介できる美容室あらへんわ!」京都の恩師の言葉

 

 

最後に京都美容専門学校時代の話を一つ。学生時代の僕はとてもマジメとは言えませんでした。学科中はゲームボーイアドバンスで友達とマリオカートをしていたし、ワインディングの授業で巻けた人から帰れるってときは、超適当に巻いてさっさと帰っていました。バイク通学禁止なのにバイクで来ていることがバレて停学を食らったこともあります。出席日数も退学までギリギリで、病気にかかっても休めない状態でした。

 

1年間アルバイトしてお金を貯めて、東京で美容師をしようと思っていたので、就職活動もまともにしていませんでした。ところがバイトしていた居酒屋が、卒業を前にして潰れてしまったんです。僕はそこで働いてお金を貯めるつもりだったんですよ。

 

卒業後は無職なので、アルバイト先を探すもののなかなか見つからず。しかも同じタイミングで市議会議員だった父親が落選し、無職に。中村家が全員無職になってしまったんです。その後、家で飲食店をすることになったので自分も手伝うことに。時給は500円だったんですが、勤務時間は朝8時から24時までだったので、あっという間にお金が貯まりました。

 

貯めた100万円で上京するつもりだったんですが、そのお金でビックスクーターを買ってしまい…。お金もないし、これからどうしようかと思っていたとき、「とりあえず京都で美容師をしよう」と思って、アポなしで専門学校に行ったんです。

 

「とりあえず京都で働くので、どこでもいいから美容室紹介してください」という僕の言葉を聞いた元担任の西初美先生は「アンタなんかに紹介できる美容室あらへんわ!」と言いました。西先生は実家の飲食店にも何度か来てくださっていたこともあり、どこか紹介してくれるかもしれないと期待していたのですが、在学中の態度も紹介の頼み方もよくないわけだから、まあ当たり前ですよね(笑)。

 

 

結局、近くの職安で見つけたサロンに就職しました。しかも、そのサロンは事業拡大のためにとりあえず求人を出していただけで、求人募集を止めることを忘れていたんだとか。サロンの立場からすると、特に望んでもいない人材がいきなり飛び込んできたみたいな感じだったんだと思います。でも、そのオーナーは「西先生のところの子やったら断れるわけないやんけ」と言って採用してくれました。

 

西先生には無礼なこともしましたが、京都に帰るときは必ず挨拶をしています。一昨年、西先生から「学校のパンフレットに出てくれないか」という連絡がありました。インタビューと撮影をして、いざパンフレットを見てみたら、自分の記事が最初の見開きに使われていて驚きました。いきなり豹柄の美容師が出てきて大丈夫かなと思うんですけれど、パンフレットに出ることで尊敬する先生に少しでも恩返しできているとしたら嬉しいです。

 

 

プロフィール
air-GINZA
スタイリスト/中村 有佑 (なかむら ゆうすけ)

京都府出身。京都美容専門学校卒業。SNSを通じてairの木村氏と出会い、多大な影響を受け2014年に「air」へ転職。「再現性」「似合わせ」を一番に考えたヘアスタイル作りが得意。自ら「豹柄美容師」と名乗り、ブログが人気を博する。airグループの看板スタイリストの一人。

 

(文/外山 武史 撮影/泉山美代子)

 

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