美容師のコトダマ 人生の節目で思い出す言葉「天まで届くアホになれ」 BLANCO SPIRAL トヲルさん
人生は一度きり、人はいつか必ず死ぬ
会社に残ると決めた1年後くらいに、社内のセミナーで「自分の弔辞(死者を弔う言葉)を書いてください」というテーマのものに取り組みました。テーマを聞いて最初に思ったのが「死にたくない」ということ。でも講師が「人生は一度きり。人はいつか必ず死ぬ」と言ったんですね。いつか必ず死ぬのなら、死ぬときにどう思われたいのか、そのために今何をすべきなのか、自分と向き合うきっかけになりました。
そのときの自分の答えは「死んでも名前が残る歴史上の人物になる」こと。たとえば、ヴィダル・サスーンは亡くなっても、サスーンカットは残り続けています。僕も一度きりの人生を完全燃焼させて「天まで届くアホ」になり、世の中を賛否両論で騒がせる新しいことに挑戦していきたい。それは作品づくりなのか、美容技術に関する内容になるのかは分かりませんが、「天まで届くアホになれ」という言葉が勇気をくれるんです。
飛行機を発明したライト兄弟は、きっと変人扱いされていたと思います。新しいものは、なかなか理解されづらいからです。これに似た葛藤は、美容師の世界にもあります。たとえば、僕はヘアコンテストに出るからには優勝したいと考えます。その一方で、本当に新しい作品には賛否両論があるものだから、絶対に1位にならないと思うんですよね。熱烈に支持する審査員がいれば、絶対に受け入れられないという審査員もいて、結果として5位くらいの作品が一番斬新な作品だったみたいな感じになりがちだと思います。
コンテストで優勝もしたいし、新しいものもつくって世に問いかけたいというのが僕の本音です。この葛藤がぐるぐると頭の中で回っています。ただやはり僕は「天まで届くアホになれ」の言葉通り、アホと思われるような新しいことに挑戦していきたいんですよね。