美容師のコトダマ 人生の節目で思い出す言葉「天まで届くアホになれ」 BLANCO SPIRAL トヲルさん
「どうせアホやし」 サロンを辞めそうになったことも
ときには「天まで届くアホになれ」が、ネガティブな意味合いで僕を動かすこともありました。というのも、コンテストで結果を出していたので作品づくりはできるのですが、サロンワークだと結果が出ない時期があったんです。コンテストの作品は彫刻に近い考え方でつくりますし、髪1本をスプレーで固めたりする世界。ブローもツヤが出るまできっちりやります。でも、これではナチュラルなヘアをつくることができないから、「お客さまに馴染んでいない」とダメ出しされていました。
思うようにいかない日々が続き、次第に環境を変えてみたいという気持ちが強まって、10年ほど前、退社を決断したことがあります。最終出社日も決まっていました。独立して自分のサロンをつくるつもりだったんです。
そのとき、僕の頭の中にあったのは「天まで届くアホになれ」という言葉。ただし、「どうせアホやし、行くとこまで行ったる」という破れかぶれな気持ちでした。
結局、退職前にミーティングの機会をいただき、上司や先輩と話をしたことで、僕は会社の人たちが好きであることに気がつき「辞める」という選択を捨てました。辞めないと決めてから心を入れ替えたこともあり、すぐに副店長、店長へとステップアップ。今は辞めるという選択肢は完全に消えました。