「人が育ち、辞めないブランドサロン」の礎となったコトダマ hair salon Gallica 中村 飛鳥さん
満員電車の中で見た経営の神様の言葉「真剣勝負」
専門学校を卒業するとき、先生が松下幸之助さんの『道をひらく』をプレゼントしてくれました。朝、激混みの東急田園都市線の中でそれを読みながら表参道のサロンに通っていたんです。
1年目のころ、サロンに行くのが辛くて仕方がないくらいだったんですよね。一生懸命仕事をしているけれどことごとくダメ出しをされて、半年間叱られない日がないくらいでした。お客さんからも「あの子センスないね」と言われるくらいの劣等生で、完全に萎縮していましたね。専門学校時代は優秀だったので、そのギャップも僕を苦しめていました。
僕が『道をひらく』を読んでいたのはそんなころでした。本の一つのテーマに「真剣勝負」という言葉があったんです。「真剣」とは刀のこと。刀を抜いて戦えば、ケガは当たり前だし、負けたら死んでしまう。そのくらいの覚悟をもって日々生きているか? と問いかけられた気がしました。実際、何かを成し遂げた人は、日々真剣勝負をしていると思います。
「真剣勝負」という言葉に自分はどこまで本気なんだろうと改めて振り返りました。毎日、死ぬか生きるかのつもりで1日1日積み重ねてやっていけば、必ず成長できるんじゃないか。そんなふうに意識が変わりました。
僕は技術の習得も遅いし、コミュニケーションも微妙で、本当に何もできなかったんです。だけど、人と比べてもしょうがない。真剣勝負をすれば、今日より明日、必ず成長できるはず。1日1日を積み重ねていこう。僕はその積み重ねでここまでやってきました。
人の動かし方を学んだ言葉「どういう意図があるんだ?」
スタイリストになってからの話です。コミュニケーションに細心の注意を払わないといけない上司がいました。何か話すと「どういう意味があるんだ」と必ず言葉の裏にある真意を問われます。
逆に上司から何かを問いかけられたときも、上司が求めている答えは、もう決まっていて、上司の意図は何でどう答えるべきかを察する必要がありました。その答えと違うことや自分の意見を言うと大変なことになってしまうこともありました。その時に学んだのが、まず相手の意図を汲み取った上で、自分の意見を伝えること。
まずは上司が意図することを解明し、求める答えを述べた上で、伝えるべきことを伝える。それからコミュニケーションも上手くいき、上司に信頼してもらえるようになりました。僕と同じことができない後輩もいるから、中間管理職のように上と下のコミュニケーションをつなぐ立ち回りをしていた時期もあります。
まず相手が求めているものを察することはすごく大事で、これはお客さまやスタッフと接するときも同じ。まずは相手の要望を汲んであげる。その上で、伝えるべきことを伝える。サロンの空気づくりや、人を動かす力にもつながっています。
>hair salon Gallicaの合言葉「思いやりと勇気」