「雑誌の誌面のその先に、人生は続いている」 ヘアライター/佐藤友美さんが語る美容業界
私の読者、ちゃんとケアしてもらえてる? と思ったことが始まり
-執筆活動ももちろんですが、セミナーや講演などでもご活躍ですね。
佐藤さん「雑誌が出ると読者から編集部にいろいろな声が届くんです。クレームを含めて。とくに昔は、雑誌に1回出るとお客さんが300人くるという時代。雑誌に出た美容師さんに予約が殺到して、その方だけでは対応できず、別の美容師さんが担当するということもありました。そういうときに、『私の読者、ちゃんとケアしてもらえているかな?』と思ったんです。代わりに担当してくださった美容師さんはうちの読者のことをわかってくれているかなあ…と」
-それでセミナーを?
佐藤さん「最初は頼まれもしないのに勝手にサロンに押しかけました(笑)。『女性誌にはこういう種類があって、こういうポジショニングになっていて』とか『この雑誌の読者はこういうことに興味があるけど、こういうことは言ってほしくない』とか。そういう「雑誌によって違う読者の心理」をサロンに説明して回っていたら、それがメーカーの人に伝わって、全国のセミナーをやらせてもらうようになったという感じです」
-パワフルですね! そのような考え方になったのは、ライターを始めた当初からですか?
佐藤さん「この仕事を始めて5年目くらいに、美容師さんと仲良くなって、夜、飲みに行くようになってからですね。美容師さんから、不登校の子が髪を切ったら学校に行けるようになったこととか、いろいろな話を教えてもらったんです。雑誌の誌面ってイメージを重要視するところがありますが、その写真をみている読者にとっては、その先にそれぞれの人生があるんだと感じたときに、誌面をつくることがゴールじゃない。そこから先に、読者が喜んでくれること、美容師さんが喜んでくれることが私の仕事だと思ったんです」
頑張ったら、頑張った分だけ結果がついてくる
-佐藤さんが考える、美容業界のこれからは?
佐藤さん「美容業界に限ったことじゃないのですが、だんだん口先だけでは生き残れない時代になってきていますよね。不正はすぐに暴かれるし、時代は透明化していると思います。そういう意味では、頑張っているサロンにとってはいい世の中になってきたのではないかと思います。
スタッフの教育など、見えないところできちんとお金と時間をかけてきたサロンは、お客さまにもしっかり伝わる時代になってきたと思う。だから、頑張ってきたサロンは生き残れるし、そうじゃないサロンは厳しいと思いますね。
私は美容師の仕事は、これからも絶対になくなることはないと思います」
-というと?
佐藤さん「どんなに人工知能の研究が進んでも、美容師という仕事は機械にとって替わられることはないと思うんです。技術面でもそうだし、コミュニケーションの部分でも、将来性のある職業ですよね。世の中にいろいろな仕事がありますが、人の役に立つことをして、面と向かって「ありがとう」って言われてお金をもらえる仕事って、そうはないと思うんです。でも美容師って、数少ないそういう職業。
しかも、アニメや建築、ゲーム業界などと並んで、日本が世界にアドバンテージを持っている貴重な業界ですよね。コミュニケーションの部分は別としても、技術に関しては日本人の髪質は世界で一番難しいとも言われていますから、日本で通用すれば、世界中、どこに行っても通用するスキルだと思っています」