Voicyスペシャル対談 LECO代表 内田聡一郎×アートディレクター 大島慶一郎 (後編)広告の目的は外さない…でもちょっとズレるからおもしろくなる

 

渋谷のヘアサロン「LECO」の代表、内田聡一郎さんは音声メディアVoicy(ボイシー)で「soucutsの美容師ラジオ」という番組を運営しています。今回のゲストはアートディレクターの大島慶一郎さん。LUMINEやヒカリエ等商業施設のビジュアルディレクション、『Amazon Fashion Week TOKYO』、ミュージシャンのアルバムジャケットやMVなどに携わっています。広告業界で一目置かれるアートディレクターと内田さんの異業種対談を前編・後編に分けてお届けします。今回は後編です。ぜひ前編と合わせてご覧ください。

 


 

「クライアントの話を聞いて、一番の目的を明確にすることが大事です」(大島)

 

 

内田:大島さんは、広告やファッション、CDジャケットなどさまざまな仕事をやられているわけですが、哲学というか、ポリシーというか、共通するものはありますか。

 

大島:なんだろう…うまく言えないんだけど、おもしろいほうが好きですね。カッコいいけどおもしろいみたいな。

 

内田:大島さんからクライアントに「こういう感じにしましょう」って提案するんですか。

 

大島:僕はクライアントの話をすごく聞くようにしています。その上で、広告の一番の目的から外れないようにしています。でもそこからちょっとズレるのが、自分らしさかもしれないですね。

 

内田:じゃあヒアリングが大事ですか。

 

大島:最初のヒアリングが一番大事で、そこでいっぱい引き出しています。「これどうですか」「これどうですか」とたくさん聞きますね。

内田:美容師とちょっと近いかもしれないですね。これまでの髪型や最初の3回の傾向、それまでの履歴とか、全てを見た上であえて軸をずらしてみたりとか。そこの駆け引きがあるんですよね。

 

大島:要望をハッキリ言ってもらったほうがやりやすいですか?

 

 

内田:僕はめちゃくちゃ提案したいタイプなんです。僕も日頃からいろんなところに露出しているから、僕の世界観に触れたくてくるっていうお客さまが多いというのもあります。

 

とはいえ、髪はその人の所有物だから、何かしらの要望はあるはずで、そのエッセンスを引き出す駆け引きが美容師の大事なところかなと。

 

大島:なるほど。僕は内田さんの話している内容がわかりやすくてしっくりきたから、安心してお任せできました。

 

内田:自分の考えをプレゼンするとき、どういう言葉を使うのかって大事ですよね。アートディレクターはその連続でしょう?

 

大島:言葉選びは気を使いますね。いきなり向こうが提案してきたものをダメだっていうディレクターもいるけど、僕の場合は「それもいいですけれど、もっとよくなるためにはこういうやり方もあるかもしれないですよ」とか言い方を考えますよね。 

 

内田:15年もやっていると駆け引き上手になってそうですね。

 

大島:いや、下手ですよ。僕は突っ込まれるキャラなので、それを生かしています。「本当はどう思ってんだよ?」と突っ込まれて「こうしたいです」と言ったり。

 

内田:あはは(笑)。

 

大島:逆に引き出してもらっちゃうみたいな。

 

内田:でも大島さんは何を考えているかわからないところあるじゃないですか。「めちゃくちゃ変態なんだろな、この人」みたいな印象ありますもん。掘っていくとめちゃくちゃ穴が深そう。

 

大島:そうみられているということは、そういうことなのかもしれない。

 

「ゼロイチで考えるのって苦行じゃないですか?」(内田)

 

 

内田:大島さんはゼロからイチを生み出すタイプですよね。僕も美容師として、ゼロイチで考えるんですけど、まあ苦行ですよね。美術館に行ったり、洋書を見たり、いろんなところに遊びに行ったりしてなんとか捻り出すような感じでやっています。

 

もはやゼロイチなんて存在しないのかもしれないけど、いつも新しい表現を出していきたいと思って、日々勤しんでいるわけです。そんな僕の悩みを含めて聞きたいんですが、大島さんはゼロイチってどうやっているんですか。

 

大島:まあでも、どの仕事も「目的」があるので。それに取り組む時点で新しいものができるという考え方なんですよ。その目的に対しての答えをきちんと考えていく。

 

「ていねいに」という言葉がふさわしいかもしれない。何事もていねいにやるっていうのは、身近にあるものでパパッと済ませるというのとは違うわけです。

 

内田:アイディアはいつインプットしているんですか。

 

大島:日々インプットしていますね。電車に乗っているときにおもしろいものを見つけたらパッと撮ったりするし。

 

内田:ザッピング的にいろんなものを吸収して、大島さんのフィルターを通してそれがガッちゃんこするみたいな。

 

 

大島:自分のツボにハマるものはどんどんメモをしたりしています。 

 

内田:僕も結構メモ魔なので、「これ使える!」とか絶対にメモするんですよ。造語を思いついたらそれを書くとか。その辺はちょっと似ているんですかね。

 

大島:多分同じような感じですね。あえて収集しようとは思っていないですけど。テレビを見ていても、ラジオを聞いていても、表現とつながるというか。

 

内田:情報はめっちゃ入れるタイプですか。

 

大島:そこまでじゃないかな。気になることだけインプットしています。無意識にやっていることが多いんですけど、仕事のスイッチが入ったときはガーッと集中してやりますね。あとは自分の体で知っていることじゃないと必要なときに出てこないから、なるべくいろんな体験をしておこうと思っていますね。それがゼロイチかも。

 

>「好きなもの?うーん、エロかなぁ。エロいってのはおもしろい」(大島)

 

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