Voicyスペシャル対談 LECO代表 内田聡一郎×かつお食堂 かつおちゃん(後編) 現場に行かなきゃ「かつおと生きる人の物語」まではわからない
「かつおちゃんの話を聞いていて、俺は反省したよ」(内田)
かつお:ある宿では、ご主人が夜中にかつおを釣ってきてくれるんです。その帰りを待つ奥様が「お父さんが一生懸命釣ってきてくれたかつおを一ミリたりとも無駄にはできない!」と、愛情をこめてた手料理にして食べさせてくれたり。宮古島には、俺の人生は鰹節だと言いながら泡盛を飲むおじいちゃんがいたり。そういった、教科書には載っていない人の体温や歴史や文化を大切にしたいと思っています。思い返すと鰹節を削っていた私のおばあちゃんからもぬくもりを感じていたのだと思います。
内田:今話を聞きながら反省したんだけど、俺は美容師になるときにそんな熱い心はなかったかもしれない。どちらかというと、そのころ美容師がトレンドだったから、美容師になって売れっ子になったら有名になれるかもしれないとか思っていたから。かつおちゃんは、そういうよこしまな気持ちゼロじゃん。売れる理由がわかるなと思った。巻き込む力がすごいからさ。やっぱりかつお全然知らない人でも、もっとかつおを知りたいって思わせる力があるじゃん。かつお食堂の新メニューも食べさせてもらったけど、あれはなんて名前?
かつお:かつお焼き丼。
内田:あれはね、本当に美味かった。
かつお:ありがつお!
内田:やっぱりさ、かつお愛から始まって、それが技と噛み合いはじめて、恐ろしい掛け算の効果を発揮しつつあるんだろうね。まず愛が最初にあって、料理の技術や知識が伴ってきている。かつおのことを勉強しようと思わなくても、好きで好きで仕方がないからどんどん詳しくなるんだろうなと思った。だから色々な有名人が足を運ぶし、テレビ取材なんかもたくさんくるんだろうね。かつおちゃんのかつお愛にみんなやられるんだろうね。
かつお:そうだといいです(笑)。
内田:美容師ってさ、仕事としてどう成立させようとか、どうやってこれで食べていこうみたいなところから出発する人が多くて、今ならカラーリングに特化してみようか、この技術が流行っているから学んでみようとか、そういう感じなんですよ。だから、伝道師みたいな人にはちょっと敵わないというか。しかもかつおちゃんはさ、ナチュラルに伝道師みたいになっているってことなんだもんね。
かつお:私はかつおのリアルを伝えていきたいと思っていて。私は「かつおの声」って言っているんですけど。そこを大事にしたいと考えていますね。気象の変化でかつおの生態がどう変わってきているとか、そういうのも今のかつおのリアルだし。
内田:かつおも変化していっているわけだね。
かつお:かつおのライフスタイルは変わっていますね。そういうのって普段生活していたら知らないじゃないですか。なので私もかつおと一緒に回遊して、その土地で釣れたかつおを漁師さんから直接お店に送ってもらって、さばいたりしたいなと。漁港に行って漁師さんの話を聞いたり、女性はかつお船に乗れないんですけれど、小さな船に乗船させてもらったりはしていて。私もかつおのように回遊しながら、その地域のかつおの魅力をもっともっとリアルに感じたい。目に見えないような大事なことがたくさんあるので、それをしっかり伝えて未来へ繋いでいきたいですね。
>「好きなことを仕事にするためには継続と行動が大事」(かつお)