LECO代表 内田聡一郎×Hair & Headpiece artist 光崎邦生(後編) 今、君たちが憧れている世界は、君たちが輝く未来にはもう存在しない ーVoicyスペシャル対談 ー

「今の若い世代ってコピーとオマージュの差がすごく曖昧だと思ってる」(光崎)

 

 

内田:邦生くんは現場を納得させるようなロジカルな側面も持っていると思う。トリッキーな表現の裏にあるロジックみたいなものを感じるんだよね。

 

光崎:自分のInstagramで、なんでこういうものをつくったのか説明してるんだけど、自分としてはロジカルだと思っていなくて。クリエーションに至るまでのバックグラウンドや、その過程で起きたハプニングとか、たくさん入っているじゃない。ゼロからパンッて生まれるというよりは、その人が目にしてきたものの積み重ねだったり、過去の失敗だったり、それらの影響があると思う。これをInstagramに書いたのは、若い世代に伝えたいことがあるから。今の若い世代ってコピーとオマージュの差がすごく曖昧だと思ってて。

 

内田:ああ、わかる気がする。

 

 

光崎:若い世代のクリエイティブな作品を見たとき、その人の思想なり、何でそこにそうなったかっていうことを感じる作品が少ないなって感じていて。やっぱ今の若い子って、Pinterestとかですごいいい情報を見てるし、センスがいい子はやっぱそれだけで成り立ってるけど、作品を見てみるとあんまり響いてこない。多分厚みがないんだと思う。例えば、僕がコンドームを使ってヘッドピースをつくったとき、そこに至るまでのストーリーがあるわけで。そのときに使っているブランドの服だったり、撮影のコンセプトだったり、そういうものが相まって成り立っているから全体の世界観がカッコよくなっている。それをただ真似しても同じようにはならない。そういうアドバイスをしたい。

 

内田:すごいわかるなぁ。美容業界にも盗作問題があって、それこそPinterestに出ているものをそのままトレースしちゃうとかもあるんだけど。「何をもってクリエイティブなの?」 「何を持って世の中に打ち出していくの?」って感じることはある。邦生くんの話にも出てきた厚みとか、自分が大切にしてきたカルチャー、生き方みたいなものが出るじゃないですか。若い子に「厚みってどうやって出すんですか?」って聞かれたら邦生くんはなんて答える?

 

 

光崎:僕は1年に6回、学校の先生もやってて。そこでクリエイティブ論を話すんですけれど。学生に対しては「コピーはコピーとしてした方がいい」と伝えています。でも、コピーに慣れすぎると、コピーしている感覚がなくなる。これはまずいよね。いいものをピックする力は重要なんだけどね。あと、僕がものをつくるときに大事にしているのは、アイディアをカタチにするときのベクトルの向き。例えば、多くの人は何かしらのテクニックを持っていたら、それをデザインに落とし込む方向で考えると思う。美容師でいうとカラーリングのテクニックを学んで、どうやったらそれをかっこいいデザインに落とし込めるか考える。僕は逆のベクトルを意識していて、頭にあるイメージを具現化するためにどうするか考えているんだよね。

 

内田:なるほどね。

 

光崎:テクニックは後なんですよ。だから、ヘッドピースとかでもめちゃくちゃく重いものを載せないといけないとき、重いから無理だとは思わない。載せたいなら、載せる方法を考える。ゴールを決めて、そこにたどり着くまでの制限をかけない。スケッチしたファーストイメージを大事にして、できるだけ具体的に自分の中に留めておく。Instagramにも書いたんですけど、ヘアを凍らせてみようと思ったのなら、凍らせたように見せるんじゃなくて、実際に凍らせる方法を考えてみる。燃えたウィッグだったら、実際にウィッグを燃やす。燃えた感じを出すにはどんな素材を使えばいいんだろうとは考えない。

 

内田:そこにたどり着くにはどうするか、「HOW」を考えるってことだね。今はどっちかっていうと「HOW」が正解みたいになっちゃっているから、思考力がなかなかつかない。若い子はさ、いざつくってみるとどうしてもどこかで見たことがあるものが出てきたり、トレースしているつもりはないのにトレースしている感じになったりすると思う。自分のオリジナリティを出すって口でいうほど簡単じゃないし、難しい問題だな。

 

>「若いときに憧れた世界は、自分が成長したときにはもう存在しない」(光崎)

Related Contents 関連コンテンツ

Guidance 転職ガイド

Ranking ランキング