特集「海と美容室」-2nd STORY「島の美容室」を巡る、美容師の幸福論
人口約400人。娯楽と言えるものもあまりない島の人々にとって、福田さんの美容室で過ごす時間はこれまでに経験したことのない至福の時。すべてのお客さんと丁寧にコミュニケーションをとる福田さんは、今では島一番の事情通かもしれないそうです。
「福田さんの美容室で髪の毛を切ってもらって、きれいにしてくれて、マッサージしてもらって、さらに自分のいろんな話も聞いてくれる。島の女性は、そんな今までにない体験に目覚めてしまったのかもしれませんね。みなさん毎月福田さんが来るのを楽しみに待ってますよ」
ファインダー越しに島の人々と美容室を追いかけてきた福岡さんは、福田さんと同世代の写真家として多くの広告、出版の撮影を手がけています。しかし、東北の震災をひとつのきっかけに、多くのことを考えさせられたと言います。いいテーマに出会い、それを写真で伝え残していきたい。そういう気持ちになっていた時、同じ価値観の福田さんに出会ったのだとか。
「どの人生が幸せか、なんて人それぞれだから一概には言えないけれど、僕らはそろそろこういう人のためになることをやりたいなって時期に来てたのかもしません。私も福田さんの仕事、働き方への価値観がモノから気持ちに変化していく。そういう事に共感したんでしょう。だからこの作品を撮った。本人が感激しないと人に伝わるいい作品はつくれません。実はいまだに福田さんがなぜこんなことをしているのか、明確にはよくわかっていません。福田さんにとっては島に行く事が知らないうちに日常と化し、6年間続けていたら実はこんなすごいことになっていた。そんなイメージですね、僕の中では」
■書籍紹介
島の美容室
沖縄・渡名喜島の月に10日間だけ営業する美容室を題材にした写真集。写真家・福岡耕造が切り取る島民のポートレートが、働くことの意味、そして日本の過疎地が抱える問題を鮮やかに浮かび上がらせる、話題作。
発行:ボーダーインク 著者:福岡耕造 ¥1,800(税別)
http://www.borderink.com/?p=12097
(取材・文/QJナビ編集部)
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