飽きのサイクルがコンテスト入賞の近道。-LECO内田聡一郎の仕事論 ゲスト/siki磯田 基徳さん tu.luce C-LOOP UNITEDの中村ゆいさん
いつまでも審査員で居られるわけじゃない!? 最近の審査員事情
―先ほど内田さんがおっしゃっていた“コンテストの在り方”というキーワードが気になります。
内田:僕、さっきコンテスト出たことないって言ったけど、最近のコンテストは審査員も試される場所なんですよ。
最近のフォトコンは審査員も作品を提出しないといけなくて。それって、出場者が審査員を審査していることと同義だと思います。
それこそ磯田くんや中村さんみたいなハイブリッドな人たちが出場している中、「この人に審査してもらいたい」って思ってもらわないと呼ばれなくなると思う。審査員の作品を見て「え、この人の審査されるの?」と思われたら、(審査員として)出ちゃいけないと思うんですよね。いつまでも呼んでもらえるように頑張らないと、って本当に思います。
内田:話変わっちゃうんですが、審査員をやっていておもしろいのが、3歩以上先を行く作品があるんですよ。もはや「逆に俺がダサいのか!? 」って自分の価値観をぐるっと覆してくれる作品に出合えるんですよね。
磯田:めっちゃ分かります、特に学生のコンテストの審査員に呼ばれると、「ええええ!」って驚く作品ありますよね(笑)。どうしてこれ作ったの? って作品。僕にはない発想力というか。
内田:ウィッグとかすごいよね。凝り固まった自分のセンスをフラットにしてくれるので、審査員をやっててよかったと思えるんですよね。
飽きのサイクルを早めることこそ、コンテストの勝ち筋?
―コンテストの大変さを聞いてもよろしいでしょうか?
中村:今年はほとんどのコンテストを同じモデルさんにお願いしています。
同じモデルさんで出場しているということは、毎回違うテイストで勝負しなくちゃいけなくて、そこの追求がちょっと大変ですね。
磯田:コンテスト出場は、“全て”が大変で(笑)。
センスに長けている美容師ではないので、エッジの効いたクリエイティブや衣装を考えるのは毎回新しいチャレンジ。
内田さんのクリエイティブの引き出しってどこから生まれるんですか?
内田:僕は毎日クリエイティブな仕事を求められる立ち位置だし、お客さまもクリエイティブ思考の人が多くて仕事をしながら引き出しを増やしてもらったって感じかな。
―中村さんの引き出しの増やし方は?
中村:コンテストでいうと、私の場合ヘアは最後に決めることが多くて、衣装先行なんです。
モデルから作品のストーリーのヒントをもらったり、お客さまの施術をしているときに思い浮かぶものを形にしていきます。
磯田:思い浮かぶものを形にするためには時間をかけないとできないと思いますね。
僕は最初のコンテストでたまたまグランプリを取れてしまって。「こんな感じで取れちゃうんだ〜」と奢っていたら、そのあと全然賞が取れなくなりました。
やっぱり言い訳できない努力の差、時間をかけることでクリエイティブにたどり着けると思います。
内田:コンテストで審査員がチェックをつける人や優勝する人の傾向を挙げるなら、作品が1歩2歩早い人。
コンテストって自分の頭の中の戦いだから、量をこなしている人の方が優勝に近い気がしますね。
中村:コンテストに多く出場しているタイプの美容師なので、前回とは同じ感じでは出せないですね。周りの人に「また同じ感じかぁ」と思われるのってダサいと思っていて。
内田:近くにいる人がびっくりするような作品を出せる人は強いですよね。
磯田:そうですね。特にアシスタントって毎日一緒にいるから、態度が顕著でシビア。アシスタントに納得させられるようなモノづくりをするのは背中を見せるという意味でも、本当に大切。
数をこなしていると、自分の中で飽きのサイクルが早まって、今度はまた別のもの! と新しい作品に取り組んでいるような気がします。
内田:ああ、飽きのサイクル、確かに。
そういう人ほど、1歩2歩早い作品を生み出せているかも。
中村:確かにそうかもしれません。一度自分らしくない、勝ち筋っぽい作品を作ったら、全然勝てないことがありました。
―グランプリって満場一致で決まるものですか?
内田:正直グランプリって審査員が誰なのかによって変わっちゃうんですよね。コンテストのいいところでもあり悪いところでもあるのが総合評価なところ。
各々が思うイノベーティブなものが違うんですよ。例えば、意外性がある人は魅力的に見えたり、コンテスト専用のモデルさんを使うと一定のクオリティは担保できたりするけど。う〜ん、でもなんとも言えないかな。やっぱり他の人よりもクリエイティブが先を行っている人こそ優勝に近いのかな。