【最終回】行くはずのなかったカナダで出会った美容師-旅人美容師、桑原淳の世界一周の旅コラムvol.18カナダ編-
カナダに滞在中、僕はカットばかりしていて観光があまりできませんでした。
唯一行ったところといえば世界三大瀑布であるナイアガラの滝。
トロントから2時間程車を飛ばすと行けるその壮大な滝はカナダとアメリカにまたがっていて、一大観光スポットになっています。
カジノやショッピングセンターを抜けるといきなり滝が出てきます。あまりにも街中にあるので見えた瞬間「え、ここ?」と少し笑ってしまいました(笑)
激しい水の流れと50 メートルもの落差により水しぶきが舞いあがっています。
そんなナイアガラの前でトロントの有名サロンで働く日本人美容師ナオミちゃんをカットすることになりました。
トロントに着いた初日に人の紹介で出会い、話しているうちに意気投合し、ナイアガラに一緒に行くことに。
「滝で髪を切ってくれませんか?」
そうお願いされていたのですが、水しぶき&強風でとても切れるような感じではありません。
なんとか行けそうな場所を探し、風で髪が飛んでいかないようにゴミ袋をセットして細心の注意を払いつつも、くだらない話に笑いあいながら髪を切っていく…。
2度と訪れないであろうこのシチュエーションでのヘアカットもまた楽しくも不思議なひと時でした。
その後アメリカに一度出国するも、また2週間後にはカナダに戻ってきていました(笑)
予想以上にトロントは居心地がよく、出張ヘアカットなどをしながら1ヶ月半もの間滞在しました。
コートをはおるようになった11月、ついに僕はカナダを出ることを決めました。
それは旅の終わりを意味していました。
トロントで出会い、ナイアガラの滝で髪の毛をカットしたナオミちゃんと共に日本に帰って美容室を共同でオープンさせようということになったのです。
それはとても楽しみなことでした。
でも、カナダを出ればもうあとは帰るのみ。
1年8ヶ月にも及ぶこの自由でサイコーな旅、1000人ヘアカットの旅が終わる…。
満足したといえば満足した。
まだ続けたいと言えば続けたい。
とても複雑な気持ちでした。
でも僕は終わるために足を踏み出しました。
何かが”終わる”ということ。
それは何かを始めた時に必ずセットになってやってきます。
永遠に続けるということはこの世ではあり得ないのです。
学校にしても、仕事にしても、旅でも恋愛でも、いつかそれは必ず終わります。
オギャーと声を上げた1人の人間も、素晴らしい人生の第一歩を踏み出すと同時に、終わりに向かって歩き始めるんです。
想像してなくても、想像できなくても、今している事はいつか必ず…。
終わる瞬間。
それは自分の感情は関係ありません。
いつかは誰も知りません。
それなら今を全力で楽しむしかないのかな?
僕はそんな風に考えています。
始まりも、終わりも、結局今なのかなって。
リクエストQJナビさんで連載させて頂いていたこの“旅人美容師のコラム”も今回で最終回となります。
1年以上に渡り、多くの方に読んでいただけたことを本当に本当にうれしく思っています。
-とある旅人美容師の日記を連載しよう-
最初にこのお話を頂いた日、僕はこのときを想像することができませんでした。
でもそれはやってきました。
終わってみて思うことですが、1年以上連載させてもらったことで多くのものを得ることができたと思います。
おかげで本当に多くの人に出会えました。
たくさん感謝しています。
僕の旅はこれでもう終わりました。
でも、代わりにこれからまた始まる何かがあります。
少なくとも一美容師としての僕の人生は続きます。
これからもどうぞよろしくお願いします。
本当にありがとうございました。
- プロフィール
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旅人美容師
桑原 淳 (くわばら じゅん)
山梨県出身。幼いころのからの「東京の一等地で美容師になる」夢を叶えるため、18歳で上京。日本美容専門学校卒業後は、都内2店舗で経験。「たった一度の人生だから!」という思いから、2014年3月にサロンを退社し、世界一周をして1,000人ヘアカットをする旅に出ている。
blog⇒http://junkuwabara.com/
(撮影・文/桑原 淳)