最果ての国ポルトガルで大西洋に沈む夕日を眺めながら…-旅人美容師の世界一周の旅コラムvol.7ポルトガル共和国編-
ポルトガルに滞在していた中で、今でもとても思い出に残るできごとがありました。
ユーラシア大陸最西端にある“ロカ岬”に行ったことです。
宿で出会った日本人旅行者の方と話しているときに、その岬があるということを知りました。
リスボンからだとそんなに遠くなく、日帰りでもいけるので一緒に行こうという話になったのです。
しかもその方がちょうど髪を切りたいということで、記念? にそこで切ってみようということに。
当日、大西洋に沈む夕日をみるために少し遅い時間に出発。
まずは電車にのり、世界遺産がある街シントラを目指しました。切符は2ユーロくらいで片道1時間ほどかかります。
少しその街を散策してから、バスに乗り更に1時間かけてロカ岬へ。
そこは草原が広がる、特に何もない静かな岬。
足元を見ると、サボテンの一種と思われる植物が広がり、見たことのない小さくて黄色い花が風に揺られている、なんだか不思議な場所でした。
断崖絶壁になっているところまでサボテンを踏まないようにゆっくり移動し、大西洋を生まれて初めて目にした瞬間、もちろん感動したのですが、大陸の東端にある日本を離れ、ついにこんなとこまで来てしまった。
という途方もない距離感に少し不思議な気持ちになりました。
そんな場所で髪を切る。
椅子の代わりにいい感じの岩に座ってもらい、ロングの髪の毛をカットし始めました。
足場がわるくて、慎重にカットしていく。
しばらくして、太平洋と空がオレンジ色になり始めました。
僕は髪を切りながら、一緒に来た日本人は髪を切られながら太平洋に沈む夕日を眺める…。
今まで何人もの人がこの地に立ち、この夕日を見ながら色んなことを考えたんだろう。
ポルトガルの有名だという詩人が『ここに地終わり、海始まる』 と詠んだそうです。
ここは紛れもなく最果ての地。
訪れただけでも感慨深くなると思うのですが、髪を切っていたら尚更いろいろなことを考えてしまいました。
このロカ岬で夕日を見ながらカットしたことだけでなく、普段旅をしていて「こんなシチュエーションって僕の美容師人生で二度とやってこないだろう」って思うことがよくあります。
目の前の国籍も育った環境も文化も髪質も全然違う人の髪にハサミを入れるということ。
運もタイミングもあってこそだけど、特別な場所で特別な人の髪を切れるということ。
髪の毛一本切るだけだとしてもそれは自分の中で大きなことで、特別な気持ちがあるので、普段美容室で働いていたら考えないようなことや感じられない気持ちになることがあります。
切られている人がどう思ってくれるかはやっぱりわからないんですが、その人にとって記憶の中にいい意味でずっと残るようできごとだとしたら、美容師として髪切っていてよかったし、旅に出てよかったし、この人と出会えてよかったって思います。
なんだかそんなことを思ったロカ岬でした。 僕の中でポルトガルのリスボンは今まで行った街の中でもベスト3にはいる素敵な街です。
日本からスペインに行かれる方は多いのにポルトガルは悲しいことにスルーされることが多いようです。もしその辺りに行くことがあればぜひ美しいリスボンにも立ち寄ってみてください。きっと素敵な思い出になると思います。
次回は「サハラ砂漠でヘアカット? フレンドリーな国モロッコ」編です。お楽しみに!
旅人美容師コラムバックナンバー
- プロフィール
-
旅人美容師
桑原 淳 (くわばら じゅん)
山梨県出身。幼いころのからの「東京の一等地で美容師になる」夢を叶えるため、18歳で上京。日本美容専門学校卒業後は、都内2店舗で経験。「たった一度の人生だから!」という思いから、2014年3月にサロンを退社し、世界一周をして1,000人ヘアカットをする旅に出ている。
blog⇒http://junkuwabara.com/
(撮影・文/桑原 淳)