もう一人の“旅人美容師”と出会い、一緒にトルコ人をカットする旅へ!-旅人美容師の世界一周の旅コラムvol.6トルコ協和国編-
最後に1つ、この旅でも強烈な思い出ベスト5に入るであろうできごとを紹介しますね。
トルコに入国する5日ほど前、とあるニュージーランド人の美容師から連絡をもらいました。
「君の存在は前から知ってたよ。実は僕も髪を切りながら旅をしているんだ。クリスマスに君がイスタンブールに行くという話を聞いて、僕もそこに合わせて行こうと思うんだ。よかったら一緒にカットをしないか?」
え、そんな人いるの? という感じでビックリしましたがすぐにオッケーをし、クリスマスに彼と会う約束をしました。 ちなみに、この時はクリスマスに会う人が男だったことに内心がっかりしてました(笑)。
当日、イスタンブールで最も有名な観光名所ブルーモスクの前で待ちあわせ。
そこに現れたのはイケメン美容師のジェローム28歳。 ニュージーランドで家族ぐるみで美容室を経営していたが、4年前の地震で店が潰れてしまったことをきっかけに別の店に移り、現在僕と同じように世界で髪を切りながら旅をしています。
不思議な偶然もあるもので、2014年の4月という僕と全く同じタイミングで彼も母国のニュージーランドを出発した後、南米、北アメリカ、ヨーロッパと旅をしてトルコにやってきました。
彼はカットの代金はドネーション(寄付)という形で人々からもらっていて、それで集めたお金を母国の被災地に寄付しているんだと言っていました。 カッコよすぎてビックリしました(笑)。
彼とはその日から3日間行動をともにし、ブルーモスクやアヤソフィア、ガラタ橋などの有名なスポットで一緒にトルコの人々をカットしました。 僕にとっても彼にとってもそれは初めての経験で、新鮮でそしてほんとうに楽しくて。 僕らの周りにはいつも人が集まり、笑いが耐えませんでした。
さらにカットしている時間以外にも、夜はビールを飲みに行ったりして本当にたくさんの時間を一緒に過ごし、お互いのことや将来やりたいことを話しました。
そんな数日間が終わってみて、年上であり美容師である彼から教えてもらったことが1つあります。
彼はいつも髪を切るときに自分と人との間に壁を作ることをせず、どんな人にでも対等な感じで話していました。 もちろん彼のキャラもあると思いますが、ジェロームは自然とそういったことができていて、本当に人と仲良くなるのがうまい人でした。
日本の場合はもしかしたらそれは馴れ馴れしいとか、逆に気を使いすぎなどということになるのかもしれません。 自分の生まれた国の常識などを始めとするいろんな思いや考えが頭の中で右往左往する中で、
「どうすれば人は他国の人と仲良くなれるのかな?」
そんなことを少し考えるようになりました。 基本的にものごとって日本人目線だったりします。トルコ人目線では見れないと思うので “ここが変だなこの国の人は” そう思うことも当たり前のことかもしれません。
でももう一歩踏み込んで、自分のその国に対する漠然としたイメージを捨てて地元の人と接してみるとまた変わったものが見えてくるかもしれない。 彼を見ていてそう感じました。
ジェロームとの最後のとき。 彼は僕にボソッとこんなことを言いました。
「俺らは違う母親を持つ兄弟みたいだな」
海外にいると、お土産屋のオヤジとかが「ヘイブラザー! カモーン!」とかヘラヘラっと言うことがあるのですが、そういったもののとは全然違って。 英語が母国語の彼にとって、ブラザーとか言うのはきっと普通なんだろうけど、僕はそう言われたことがものすごくうれしくてうれしくてたまりませんでした。
同じタイミングで母国を飛び出し、人々の髪を切りながら全く逆のルートで世界をぐるっと周り、そしてクリスマスに同じ地に立つ。 そんな人と世界のどこかで出会うなんて想像さえもできませんでした。
想像なんて簡単に超える。
それが旅の醍醐味でもあるのかななんて改めて感じたし、旅に出てよかったと心から思いました。 僕らは最後にガッチリと握手をして
「Have a safe and great trip!! Love and peace always brother!!(安全で素敵な旅を!愛と平和を忘れんなよ兄弟!)」
そう言ってまた別々の方向に歩き出しました。
次回は、世界一住みたい街ヨーロッパの田舎ポルトガルをご紹介。 お楽しみに!
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- プロフィール
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旅人美容師
桑原 淳 (くわばら じゅん)
山梨県出身。幼いころのからの「東京の一等地で美容師になる」夢を叶えるため、18歳で上京。日本美容専門学校卒業後は、都内2店舗で経験。「たった一度の人生だから!」という思いから、2014年3月にサロンを退社し、世界一周をして1,000人ヘアカットをする旅に出ている。
blog⇒ http://junkuwabara0614.blog.fc2.com/
(撮影・文/桑原 淳)