衝撃のインド。死者の街バラナシで出会った人々-旅人美容師の世界一周の旅コラムvol.3インド編
バラナシに到着した日に、ひょんなことから1人の男の髪をカットすることになりました。それを見ていた人からいろんな人へと噂が流れ、次の日から街を歩けば「カットしてくれ」と予約が入るようになりました。
1人カットするごとに人々が集まり、おとなしく見守ったり、騒ぎ始めたり、質問攻めされたり、みんな好き勝手やります…(笑)。ほぼ毎日、街の至るところでカットしていた僕の周りは常にワイワイと賑やかでした。
1つとても印象深い話をしたいと思います。 ある日、路上で野菜売の男をカットしていたときの話です。
7歳くらいの子どもたちが話しかけてきました。
「ハウマッチ?」
僕は、子供はフリーだよ! と答えると、子どもたちに「なんで? 20ルピー渡すからカットして!」と言われました。子供からは貰うつもりはないからと言っても相手もタダはダメだと引き下がらないので20ルピー(約40円)はしっかりもらってカットすることにしました。
インドに来るまで300人程の人をカットしてきて、お金はいりませんと言っているのに断られたのが初めてだったからとても驚きました。
インドでは「ハウマッチ?」と聞くと値段は言われずに 「お前はこれにいくら払う?」という返事がかえってくるといいます。なので、例えばお店で全く同じ商品を違う値段で売ることがあるそうです。お金がない人からはもらわず、お金がある人からはもらう。
今は廃止されたけど、まだ根強く残るカースト制度によるものだそうで、お金は少しでも払える分だけくれればいいよっていうのがあると、ガヤという街で出会ったインドの研究者から聞きました。
子どもたちは僕が髪をカットするということの対価として、彼らが払える範囲内で僕にお金をくれたということのようでした。子どもたちも家の仕事を手伝っている子が多いからなのか、お金のことにはシビアで、なんだかそれがとっても意外で印象深いできごとでした。僕も素直にインドのスタイルを受け入れ、くれるという人からはお金をいただき、ないという人からは貰わずにカットすることに決めました。そのできごとがきっかけで仲良くなった子どもたちがカット希望者を集めてきてくれて、おかげで本当にいろんな人の髪を切り、楽しく過ごすことができました。
また、1ヶ月後くらいの後日談ですが、ある日オーストラリア人の美容師の友達からメールがきました。
「バラナシに行ったときに、私は美容師だと人々に話したら『前にここでみんなの髪を切ったJUNという日本人美容師がいたんだ』と教えてくれてとても驚いたよ!」
バラナシで出会ったインド人のみんながそうやって僕が去った後も覚えていてくれて、そして人に話しててくれてたと知り、なんだか涙が出そうなくらい嬉しくなりました。(笑)たくさんの素敵な人に出会い、こういったうれしいことがあったので、行く前は恐れていたインドが今は大好きになりました。