美容業界をどうサバイブするか? 歳の差38歳!の二人が語る、これからの美容師のはたらき方
カレー屋さんとスコーン屋さん?! 美容師だっていろいろやっていいのだ
−巷で「働き方改革」がうたわれています。フリーランス美容師になって気づいたことは?
おばら:勤めていたときは、目指す夢は一人1個しか持ってはいけなくて、それがストイックでいいことなのだと思い込んでいました。でも、美容師としての仕事以外にも、やりたいことがあれば、いろいろやっていいのだな、と思って。
ここにくる前、スタッフのブログを読んでいたら、自己紹介のところに「将来の夢は映画監督です」と書いている人がいて、「え! 美容師なのに!?」と衝撃的でした。でもよく考えれば、今どんな職業についていようとも、夢を持つことは自由です。いい意味で、自分の中の常識が覆されました。
今までは、美容師ってシザーさえあれば成り立つと思っていたけれど、ここのスタッフはみんな必ずパソコンを使っていて、私も今はライターのお仕事もしているので「パソコンがないと仕事できないな」というふうに変わってきています。
春田: 自分の年齢からすると、これから新しいことをするには躊躇する部分もあるけれど、それこそ映画監督を目指している人がいるなら、「ぼくにも何か協力させて」と言いたくなりますね。
おばら:フリーランス美容師になってから8カ月間、ものすごいスピードでものごとが動いていきました。今はライターもしていますし、10月から、一般の人の住宅や仕事場を時間で売ったり買ったりできるシステムを利用して、カレー屋さんとスコーン屋さんを出そうと思っています。
とにかく今は思いついたこと、気になったことにどんどんチャレンジしてみようと思って。スコーンやカレーそのものに興味があるというよりも、そうした場を借りてお店を出したとき、どうやったら集客できるのか、どうしたら商売として成り立つのか、ビジネスの部分に興味があるんです。
世代によって、「働き方」への考え方は違うもの
春田:物がどう流通していくのか、ビジネスやマーケティング人と人との繋がりに興味があるんだね。
おばら:そうなんです。「GTSS」も美容師のためのシェアサロンですが、私はシェアリングエコノミーの精神が好きで、シェアリングエコノミーまみれの生活です(笑)。
「シェアリングエコノミー」に代表されるような、新しい働き方について知らない人も多いです。自分のリアルな体験を伝えることで、「何かやってみたい」と思っている人の背中を押せたらいいなと思います。
それに、私がつくったスコーンを食べて、少しでもしあわせになってもらえたらうれしい。誰かによろこんでもらえることが、私の幸せです!
春田:小原さんは一見、自分の欲求のためだけにやっているように見えて、実はそこにはちゃんと愛と信念があるんだね。すばらしい!
おばら:そうです、私、愛情深いんです(笑)。
−春田さん世代の美容師さんはデザイナー気質、おばらさん世代の美容師さんはホスピタリティー気質と言われています。
春田:「デザイナー気質」というか「職人気質」というか。私が若いときは「自分を表現したい」という思いが強くて、周囲が見えないまま自分の仕事が一番でしたね(笑)。
だからがむしゃらに仕事して、夜も思い切り遊んでいました。自分の中では今でいうコミュニティーや、ネットワーク作りだと思っています。
ファッションデザイナーやエディター、スタイリスト、ミュージシャン、モデル等が集うクラブに毎晩通い、少しでも親交を深めようとしていました。がんばり過ぎて、お客さまのシャンプー中に居眠りしてしまったこともありますが(笑)。
おばら:よくないですね(笑)。
春田:お客さまに「春ちゃん今寝てたでしょ〜」って起こされてね(笑)。でもそれもすごく楽しかったし、今の自分の何パーセントかはそこでつくられたような気がします。ファッションにも興味があって、美容師をしながら文化服装学院に通ってファッションの勉強もしようと本気で考えていました。学生時代から洋服もよく自分で作っていました。もちろん当時の美容界でファッションも同時に仕事にするのははとても不可能でしたけど。
おばら:私の世代は「ホスピタリティー気質」ですか。確かに、「人によろこんでもらいたい」という気持ちが強いという実感はあります。美容師もライターもスコーンやカレーを売るのもそこの気持ちはみんな同じです。