美容師が知っておきたい最新コロナ情報vol.8 スタッフを「コロナ鬱」や「コロナハイ」から守るために
ライターのさとゆみ(佐藤友美)です。
晴れて営業再開。久しぶりのお客さまにお会いできたり、思ったよりも忙しくてありがたかったりと、サロンでは嬉しい時間も増えていると思います。
しかし、プロの心療内科医からみると、「いまこの時期は、むしろ自粛期間の時以上に、メンタルケアに注意をしなくてはいけない時期」なのだそう。
『メンタル・クエスト 心のHPが0になりそうな自分をラクにする本』(大和出版)などの著書もある、秋葉原の心療内科医、鈴木裕介先生に、「スタッフの心を守るために必要な知識」についてお話を伺いました。
●たとえ嬉しい営業再開でも、ストレスはかかっている
心療内科医で、産業医でもある鈴木先生のもとには、いまいわゆる「コロナ鬱」やその予備軍的症状を訴えて、病院に通ってくる人が増えているのだそう。
自粛期間を乗り越え、仕事を再開できた人も多い今のタイミングで、なぜメンタルの不調を訴える人が多いのだろうか。
「まず皆さんに知ってほしいのは、人間にとっては『環境が変化すること』そのものが、ストレスになるということです」と鈴木先生。
環境が変わると大きなエネルギーを使わなくてはならないので、ストレスがかかるのだとか。
注意すべきなのは、辛い環境変化だけではなく、喜ばしい環境変化であったとしても、人はストレスをうけるということ。
「有名な研究で、日常生活に起こるイベントでのストレスの大きさを数値化した『ストレスマグニチュード』というのがあります。離婚によるものを100、結婚によるものを50として、あらゆる出来事のストレスを数値化しているのですが、昇進や引越しなど一般的にはネガティブではない変化にも、高い点数がつけられています」(鈴木先生)
営業を再開できるといった嬉しいことでも、スタッフさんたちは環境変化によるストレスを受けていることを知っておくことが、第一歩だ。
●ダメージが出てくるのはこれからの時期
心の不調は、すぐに出てくるとは限らない。あとからじわじわ、調子が悪くなることも多いので、注意しよう。
とくに、時間差でメンタル不調が出やすいのは、次の2つのケース。
「地震や津波などの災害時、人間には、『正常性バイアス』と呼ばれるシステムが働くと言われています。これは、ショックが大きい出来事に遭遇した場合、その出来事に対して『鈍感』になることで、心を守ろうとするシステムです。
今回のコロナ下でも、この正常性バイアスが働いた結果『意外とたいしたことなかったよ』と感じている人もいるようです。こういう人は、心配。
今回のコロナの感染恐怖やそれに伴う経済自粛などは、全人類が大きなダメージを負って当たり前の出来事です。このダメージを低く見積もらないことが重要です」(鈴木先生)
また、日本人に2〜3割ほどいるといわれる「過剰適応」タイプにも注意が必要だとか。
「とくに真面目で品行方正、人気者に多いのですが、環境の変化に必要以上にしっかり適応しようとするタイプの人がいます。例えていうなら、会社の飲み会にも全部ちゃんと出席して、場を盛り上げようとするようなタイプの人です。
こういう人は、自分が本来持っている以上のエネルギーを使って環境にものすごく適応しようとするのですが、元気の前借りをしているようなもので、枯渇した時に時間差で疲労がきます。新人の5月病なんかがいい例ですが、環境が変化して何カ月か後に、体も心もガタがくるケースもあるので、無理は禁物」(鈴木先生)
先生曰く「とくに美容師さんは、クリエイターなので、心の動きに敏感。しかも接客業なので、人に合わせることが上手な人が多いと思います。こういう人は、コミュニケーションによる心身の疲労が大きく、メンタルヘルス不全のリスクが高い傾向があります」とのこと。
自粛中の売り上げを挽回したいと、一気にフルスピードで仕事したい気持ちもあるだろう。しかし、突然スタッフの稼働が増えるとメンタル不調のリスクが上がることも。できるだけスロースタートを心がけるのが良いようだ。