「きれいをつくる美容室が、地球を汚していいはずがない」 柏の個人店がSUSTAINABLE SALON®︎認証を立ち上げた理由
本気でやれば、すぐにSUSTAINABLE SALON®︎をつくれる
SUSTAINABLE SALON認証を受けるのは大変だと思われているかもしれませんが、やっていることは難しくありません。従来つかっていたものを、9つの基準を満たすために必要なものに切り替えているだけなんです。
排水は残留物質を取り除くことができる水システムを導入しました。壁には漆喰をつかうことでアレルギーの原因となるホルムアルデヒドを除去しながら美容院特有の匂いも軽減しています。サロンで使用する電力は100%再生エネルギーです。ウチは「みんな電力」を使っています。
飲み物は、BIO HOTELS JAPANガイドラインに適合の厳選したフェアトレードコーヒーや紅茶。タオルやひざ掛けには全てGOTS認証の100%オーガニックコットンです。使用する薬剤はBIO HOTELS JAPANコスメガイドライン適合の厳選した薬剤をできる限り使用しています。安心・安全はもちろんのこと、パッケージングにまで自然環境に配慮したものを積極的に取り入れています。
サスティナブルサロンをつくることは、短期的にはコスト増ですが、長期的に考えたら決して高くない投資です。有害物質が少なく美容師にも優しいサロンですから、健康的に働ける期間が増えるかもしれない。排水に配慮することによって漏水などのリスクを減らすことができます。漆喰の壁は汚れたらサンドをかければいい。そもそも、昨今の気候変動から地球存続の危機とも世界中で叫ばれている状況です。環境に大きな負荷をかけているヘアサロン業界が変わらなければサロン自体の存続すら危ぶまれます。このように、見えないコストを削減していると捉えることもできるのです。
固定費、販促費を削減し、その分をサロンとお客さまのために使う
サスティナブルなサロンをつくる費用をどうやって捻出するか、という問題もあると思います。うちのサロンの場合は、固定費、販促費を徹底的に削減しています。
まずサロンの家賃は都心と比べたら数分の一です。毎月のランニングコストが低い分、設備やサービスに投資できます。また、販促費はホームページの維持更新費用くらいで、看板もサロンの玄関に小さなものがついているだけです。それでも、お客さまのほうから、オリエンタルジャーニーを見つけてくださいます。
一方で、課題も感じています。「都内の一等地じゃなくて、田舎だからできるんでしょ?」という声もありますし、都内の表参道、青山にサスティナブルなサロンをつくれば、より影響力が大きくなることは私も感じています。そのため、都内にフラッグシップ店をつくるビジョンもあり、数年内には実現させたいと思っているんですよ。
ありがたいことに、すでに都心のサロンが2店舗、SUSTAINABLE SALON認証取得に取り組んでいるところなので、一等地でも運営できることは証明されるはず。こうした取り組みを積み重ねて、サスティナブルな美容マーケットをつくることが僕の使命です。
- プロフィール
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THE ORIENTAL JOURNEY 代表
一般社団法人日本サステナブルサロン協会代表理事
猿田 哲也(さるたてつや)
ハリウッド美容専門学校卒。幼少期より両親の影響で発展途上国支援に興味を持ち様々な慈善活動を行う。TVで見かけた”切れない刃物”で髪をカットされる途上国のストリートチルドレンに衝撃を受けたことがきっかけで美容師を志す。過去、派遣美容師として数十件のヘアサロン勤務を経験した後、某サロン店長を経て、2019年にサステナビリティをコンセプトにした自身のヘアサロンTHE ORIENTAL JOURNEYをオープン。ヘアサロン業界において日本初のBIO HOTELS JAPAN認証取得。さらに、アジア人初として欧州グリーンサロン認証プログラムに参加。サステナブルな業界へ牽引するパイオニアとして次世代のヘアサロンスタンダードを探求する。テレビ・新聞・ラジオ・WEBなどメディア出演も多数。
(文/外山 武史 撮影/菊池麻美)