中村トメ吉さん。ヘアライター佐藤友美がみた”美容師列伝” 最終回「革命を起こす人」
「ヘアライター佐藤友美がみた 美容師列伝」。日本全国の美容師を取材してきたヘアライターの目線から、毎回「●●な人」を紹介し、その素顔に迫る新企画です。最終回はOCEAN TOKYO 中村トメ吉さん、「革命を起こす人」です。
OCEAN以前、OCEAN以降
時代には、潮目というものがあると思う。
その渦中にいるときにはわからないのだけれど、後から振り返ると「ああ、あれが転換点だったね」と言われるような、そんな節目だ。
美容業界には、長いこと、その「潮目」がやってこなかった。
少なくても、私がヘアライターになってからの17年間に、カリスマ美容師ブームを超える、時代の変革はなかった。世代交代の兆しも、今となってはなかったと言ってしまっていい気がする。
かつてのカリスマたちは、いまもカリスマだし、私が駆け出しの頃に活躍していた巨匠たちは、いまも変わらず巨匠である。
それがいま。
明らかに、何かが変わろうとしている。
地殻変動が起こる前触れ。
地中のマグマがグツグツいっていることに、気づいている人は気づいているだろう。
それは____
OCEANが、登場したからだ。
最初、インパクトのある、あのビジュアルの集団が世に登場し、
美容について、人生について、美容師という職業について語り始めた時、
多くの人は「???」と思ったのではないだろうか。
私も、その一人だ。
熱い。
というか、熱すぎないか。
あれ? 今って、そういう時代だっけ。
バブル時代ならまだしも……。
そんなふうに、なんとなくおそるおそる「様子うかがい」していた美容関係者は多いんじゃないかと思う。というか、私もその一人です。ゴメンナサイ。
OCEANは、たった数年のうちに、その一挙一動が見逃せないリーディングカンパニーになっていった。
最初にOCEANの凄さに気づいたのは、残念ながら、私を含めた美容業界の「中の大人たち」ではなかった。まずは若いお客さまたちが、次は若い美容専門学生が、その凄みに気づき始めた。
出遅れた私も慌てて、OCEANの動向をフォローするようになった。
ある有名美容師さんは「最初、OCEANのやっていることって、なんて熱くて古いんだろうって思っていた。でも今、OCEANがやっていることが、一周回って時代の最先端なんだと、やっと気づけた」とおっしゃっていた。
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これから、美容業界の歴史には「OCEAN以前、OCEAN以降」という言葉が刻まれるだろう。
それくらい、これから美容業界は、変わる。
そんなことは、私が言わなくても、もう今すぐそこにある未来なんだと思う。
先ほど、私はOCEANのことを美容業界のリーディングカンパニーと言ったけれど、では、彼らが何を「リード」したのか。
それが、ヘアデザインや、経営手法やマーケティング方法「ではない」ことが、OCEANの特殊なところだと思う。
もちろん、OCEANはヘアデザインもすごい。経営もマーケティングも超絶うまくいっている。
でも、それらをさらに凌駕するのが、「人をデザインする」という思考だ。
自分たちのサロンに来る人たちの夢を、人生を、
そして、自分たちのサロンで働く人たちの夢を、人生を、
彼らはデザインしている。
それは言い換えれば、美容師の仕事を「人の熱量を増幅する仕事だ」と再定義した、ということだ。
これが、なぜすごいのかというと、
これこそが、「AIができない」仕事だからだ。
美容師の仕事を、「この先ずっと、人間にしかできない仕事」にすること。
これが、OCEANが起こそうとしている革命だと、私は思っている。
そのOCEAN革命を率い、若手のハートをがっしり掴んで動かしているのが、中村トメ吉さんだった。
トメ吉さんは、ナンパの天才だという話だけれど、去年の夏、初めてお会いした時、(それは渋谷のルノアールでの出来事だったんだけれど)1時間話を聞いた後には、まあ私も、完全に見事に“落とされていた”と思う。
時代の革命児は、そのイカついビジュアルとは裏腹に、真摯で、まっすぐで、そしてあったかい人だった。
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