高澤光彦さん。ヘアライター佐藤友美がみた”美容師列伝” 第14回「“プロ”な人」
髪はアートか日常か
国内はもちろんのこと、海外も飛び回ってそのカットを指導されている高澤さんに、こういうことを言うのはひょっとしたら失礼なのかもしれないけれど、私が高澤さんのデザインに対して感じるのは「アーティスト」的な作品感ではなくて、「超プロフェッショナルな職人」としての仕事です。
日によってブレたりしない、人によってズレたりしない、圧倒的な技術に裏打ちされたヘアデザイン。
そして、高澤さんのデザインにはいつも、市井の人(つまりお客さま)の「生活」に対する敬意のようなものを感じます。
たとえば高澤さんは、ヘアショーやセミナーで現地のモデルさんを使うことになっても、そのモデルさんの希望以上にカットしたりしない。
たとえモデルとしてオーディションにきていたとしても、その彼女の日常に寄り添えないカットはしない方だとよく聞きます。
「何のためのカットか」というのは、実は美容師さんによって全然違うと常日頃思うのだけれど、高澤さんのカットは「見せるため」のカットではなく、毎日心地よく「使ってもらうため」のカットだなあと、いつも感じます。
自分がサロンに行ったとき、高澤さんのサロンワークを横目で見ていると、とても楽しい。
高澤さんは、日本随一のトッププレイヤーなのに、お客さまを萎縮させることが絶対にない。お客さまに遠慮をさせる空気が全然ない。これってすごいことだなと感じます。お客さまも、とてもリラックスして高澤さんに話しかけているし、高澤さんも近所の井戸端会議くらいのノリで楽しそうにお話しなさってる。
そして思うんですよね。自分を偉そうに見せようとしているうちはまだまだで、本当にすごい人というのは、全く偉ぶらないし、人に威圧感を与えないんだなあって。
あんなに世界中飛び回ってらっしゃるのに、リアルでもSNSでも、疲れた雰囲気を一切感じさせない。そんなところも、プロ中のプロという感じがします。
日本のカットが世界に誇る技術である、そして日本のカットの真髄はサロンワークにあると考えるとき、私が最初に思い浮かべるのが、高澤さんのカットです。
-Profile-
“プロ”な人/高澤光彦 (たかさわ みつひこ)
Mitsuhiko Takasawa
1975年川島文夫氏に師事、1977年のPEEK-A-BOO創設に参加。
副社長兼教育統括本部長(アカデミー部、教育部)としてPEEK-A-BOOの技術を統括。
海外事業本部長としてもアジアを中心とした講習活動の指揮をとる。
サロンではヘッド・オブ・アートディレクターとしてサロンワークを中心にメーカー主催のアカデミーやディーラー主催のカット教室(カット講習会)、海外でもカット教室を多数うけもつ。ヘアショーやセミナーも国内だけでなく上海・北京・ソウル・台北・香港で開催するなどアジア全土で活躍をしている。
課外活動は講習だけにとどまらず専門誌の撮影、技術本の作成、プロモーション撮影等をこなす。
的確なカット理論と精巧なカットテクニックで、お客さまはもとより数多くの美容師からも絶大な支持を集める。
技術本は髪書房発行の『カット展開図日本基準』『シンプルカットのすすめ』、女性モード社発行の『シザーズカットをマスターする』『進化するスタンダート』が著書にある。
文・佐藤友美
美容サイトの草分け的存在「サンドリヨン」の編集長を経て、雑誌、書籍での執筆を重ねる。15年間にわたってヘア専門のライターとして活動し、全国各地でセミナー、講演を行う。著書に「フォトシュートレッスン」(髪書房)「美容師が知っておきたい50の数字」「美容師が知っておきたい54の真実」(女性モード社)など。書籍「女の運命は髪で変わる」(サンマーク出版)から発売中。
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