樋口いづみさん。ヘアライター佐藤友美がみた”美容師列伝” 第13回「道を作る人」
樋口さんの「道を作る」覚悟
ところで、樋口さんは、多くの女性美容師に背中を見せ、道を作ってきているのだけれど、それは「ママ美容師になったこと」のシーンが初めてではないのです。
もうそんな時代があったことをみんな忘れているかもしれないけれど、昔、とくにカリスマ美容師ブーム以降の美容業界は、とかく男性美容師さんばかりがフィーチャーされていたんですよ。
どんな雑誌にも、女性美容師さんが出ていることはほとんどなくて、巨匠と言われる男性美容師さんたちが、ページを席巻してた。
そんな時代にやはり「女性美容師が活躍できる場」を作って、風穴をあけたのも、樋口さんでした。
彼女はいまでも「アレンジの女王」と呼ばれるのだけれど、それはなぜかというと、この時代に唯一(と言っていいと思う)「男性じゃなくて、女性美容師さんのほうがいいよね」と言われたアレンジページを担当しまくっていたからです。
というか、順番でいうと、樋口さんのアレンジがあまりに可愛いから、アレンジは男性美容師さんに頼むよりも女性美容師さんに頼んだほうがいいんじゃないかという新しい認識が生まれたと言ったほうが正しい。
ここでも樋口さんは、雑誌に女性美容師さんが出ることの、活躍の道を作ったパイオニアと言えるのです。
正直、アレンジページは集客につながらない。
営業を切って撮影することが、赤字になることもあったと思う。
だけど、樋口さんが切り開いてきた道は、確実に太い道になっていき、その後の「女性美容師ブーム」と言われる黄金期の扉を開いたのだと、私は思っています。
世の中には、1を10にする人と、0(ゼロ)を1にする人がいる。
だとすると、樋口さんはいつも、0を1にしてきた開拓者だなと思う。
開拓者の悲しいところは、その功績が、それが当たり前になったら忘れられやすいところにあります。
アレンジといえば女性美容師。
表参道でもママ美容師が活躍できる。
どちらも当たり前になったからこそ、樋口さん以外の女性美容師さんも取り上げられるようになった。
でも、それが当たり前になるまでには、そこに初めての足跡をつけた人がいるんだということを、そしてそれがapishの樋口いづみさんであったことを、今日は熱く語ってみました。
樋口さん、これからも輝き続けてください。
-Profile-
道を作る人/樋口いづみ(ひぐちいづみ)
Izumi Higuchi
apishオープニングメンバー
女性ならではのスタイルを提案し、
自宅でのお手入れが簡単で再現性のたかいスタイル作りをモットーとしている。
業界内では、ヘアアレンジ、set&upの女王と言われており、apishブライダル、
七五三の特別な日のヘアメイクも好評
文・佐藤友美
美容サイトの草分け的存在「サンドリヨン」の編集長を経て、雑誌、書籍での執筆を重ねる。15年間にわたってヘア専門のライターとして活動し、全国各地でセミナー、講演を行う。著書に「フォトシュートレッスン」(髪書房)「美容師が知っておきたい50の数字」「美容師が知っておきたい54の真実」(女性モード社)など。書籍「女の運命は髪で変わる」(サンマーク出版)から発売中。
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