隈本達也さん。ヘアライター佐藤友美がみた”美容師列伝” 第11回「まっとうな人」
「ヘアライター佐藤友美がみた 美容師列伝」。日本全国の美容師を取材してきたヘアライターの目線から、毎回「●●な人」を紹介し、その素顔に迫る新企画です。第11回めは「まっとうな人」。福岡switchの隈本達也さんです。
僕たちは誰のための美容師だろう
福岡のswitchといったら、最初に思い浮かべるのはどんなワードですか。
例えば、「専門学生が就職したいサロン」ランキングの常連サロンだとか
全国すべての都道府県から注文が殺到する写真集yellow[girls]を作っているサロンだとか
あの田中真奈美ちゃんを生んだサロンだとか
有名なインスタグラマーSAKIちゃんがずっとレセプショニストにストをしていたサロンだとか……
いろいろ華やかなワードが並ぶのだと思うけれど、私が最初に思い浮かべるのは、田中征洋さんとサロンを共同経営される隈本さん(隈本さんいわく、田中さんが外担当、自分が中担当)の顔で
だからかもしれないのですが、私にとってswitchさんは、時代の流れに流されない、とてもまっとうで、なんなら古風といってもいいくらいの、昔ながらの「美容室」というイメージです。
集客サイトのための写真撮影をすることが、サロンの通常業務のひとつになる、もっともっとずっと前から、switchさんではサロンのお客さまを撮影して、一冊の冊子にまとめていました。
美容師さんがカメラを持つようになるフォトブームよりもずっと前に、switchではフォトをスタートしていたし、みんなが一眼レフのカメラを持ち始めたころには、iPhone でお客さまを撮る撮影を確立して、今となってはどのサロンもやっているようなカジュアルな撮影方法を取り入れていました。
他のサロンよりも、いつも、数年早い。それがswitchです。
switchのフォトへの取り組みは、いろんなインタビューで取り上げられてきたので、みなさんもよく知っているかもしれません。
その本質は、「スタッフがデザインしたスタイルの記録」と、「お客さまへのプレゼント」という位置付けだったように、私は認識しています。
だから、switchの写真への取り組みは、全国的に有名になった今でも、サロンのお客さま(サロンモデルではなく)の写真を撮るという軸に基づいて行われているし、
あまりにフォロワーが増えたswitchスタッフのブログ、インスタグラムの発信も、あくまで「お客さま」に向かって発信されていて。
気づくと同業者向けの発信が多くなり、「いいね!」の数もお客さまより美容師さんのほうがよっぽど多いというアカウントとは、一線を画している。
目的と手段がときどきごっちゃになりがちなこのご時世に、「僕たちは誰のための美容師だろう。誰のために技術を磨き、誰のために写真を撮るのだろう」という、とてもシンプルな問いを持ち続けている。それが隈本さんだと感じます。
そこには、隈本さんの「フォロワーが多いのがいいというわけではない」「お客さまが喜んでくれなければ意味がない」という、徹底した指導があったように思います。
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