いま日本で一番予約のとれない美容師。モテ髪師・大悟さん。ヘアライター佐藤友美がみた美容師列伝 第8回「モテさせる人」
「モテる」とはすなわち、大切にされること
大悟さんが使っているサロンの個室に入ると、ずらっと本が並んでいます。心理学の本、コーチングの本、脳科学の本、スピリチュアルな本……。
聞けば、美容師の友達はほとんどいないらしい。いつも他業界の人とつるんで「美容業界だったら、どう応用できるだろう」と考えているのが大悟さん。
そして、独学だったり、友人たちが開いている講座に通ったりして学んだこれらのメソッドは、すべて、お客さまに「自己肯定感」を持たせるために使われている。
髪が綺麗になって、自分を好きになれた
髪が綺麗になって、彼に告白できた
髪が綺麗になって、自信が持てるようになった
そういう女性が一人でも増えるために、大悟さんは、ハサミだけじゃなく、アイロンを武器にすることを選んだ人。「100人を少しずつ幸せにするんじゃなくて、100パーセント幸せな人を10人作る仕事がしたい」。そう思って、「スタイリングを教える時間」をメニューに加え、お客さまの髪に全責任を持つことを決めた人なんだよね。
日本の美容師さんのハサミの力はほんとうにすごい。
だけど、ハサミの力「だけ」では到達できなかった場所に、大悟さんのお客さまは、つれて行ってもらってるんだなあということを感じます。
例えばアイロンによって、例えば大悟さんがお客さまにかけるスーパーポジティブな言葉によって。
そういえば、再会したとき大悟さんは開口一番「俺、友美さんて、アイロン嫌いな人だと思ってたんですけれど?」と、私に聞いてきました。
「いやいや、アイロンが嫌いなんじゃないよ。アイロンで巻いた髪を『パーマかけました』って嘘ついて、お客さまをがっかりさせるフォトシュートが嫌いなだけだよ」と答えたら
「うわーーーーー、俺も同じです! 俺も『パーマじゃこのスタイルにならない』ってがっかりしているお客さまのためにアイロンの巻き方教えたいと思ったんですよ!」と伝えてくれた。
こういう発言や行動って、美容業界では異端だし、叩かれたりもするけど、だけど、お客さまにとって一番いいことが、一番いいじゃん。そう思っているから言うし、やる。私たちはちょっと似たところがある、そんな気がします。
最後に。
先日、私は、大悟さんに「モテる」って言葉のほんとうの意味を教えてもらいました。
「モテる」とは、ちやほやされるとか、そういうことじゃなくて、自分を大切にできて、人からも大切にされる人になるってこと。
「人は、自分を扱うように、人からも扱われる」というのが、大悟さんの口癖です。自分を雑に扱う人は人からも雑に扱われるし、自分を大切に扱う人は人からも大切に扱われる。
毎朝、髪を巻くという行為は、自分を大切にするという行為だから、人からもきっと大切にされる。
髪の力で「自分を好きになる」ことに導いていけるのだとしたら、美容師って、なんて素敵な職業だろうって、ほんとうに、そう思ったな。
カット「だけ」じゃない、モテを作る、モテ髪師大悟さんの話、でした。
ぐっちょりーす! 次は福岡でお会いしましょう。
-Profile-
モテさせる人/Peace 義永大悟氏
PEACE HAIRMAKE代表。フクオカ美女大学学長。1978年生まれ。
一対一の個室美容室では独自の診断法で男心を掴む髪型を作りながらも、男ならではの視点の恋愛カウンセリングでお客さまの「モテ」をプロデュースする「モテ髪師」。
「大悟さんに切ってもらうと彼氏ができる」というジンクスが女性の間で噂になり、女性雑誌やテレビでも注目を集める。
相談するために髪の毛を切る女性は後をたたず、福岡で最も予約がとりにくいスタイリストとして知られる。
サロンワークの他、テレビ、雑誌、セミナー講師、講演会など全国さまざまな場所で活躍し続け、モテる理論を伝授。
文・佐藤友美
美容サイトの草分け的存在「サンドリヨン」の編集長を経て、雑誌、書籍での執筆を重ねる。15年間にわたってヘア専門のライターとして活動し、全国各地でセミナー、講演を行う。著書に「フォトシュートレッスン」(髪書房)「美容師が知っておきたい50の数字」「美容師が知っておきたい54の真実」(女性モード社)など。6月上旬、書籍「女の運命は髪で変わる」(サンマーク出版)から発売予定。
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