巨匠なのに爆発的に気さくキャラ。Un ami代表の森内雅樹さん。ヘアライター佐藤友美がみた”美容師列伝” 第6回「ゆるませる人」
森内さんがいつまでもフレッシュでいるその理由
話は変わりますが、美容師さんに限らず、デザインの世界では、「巨匠貧乏」という言葉があります。
ともに同時代を過ごした年齢の近い編集さんやメーカーさんが現場を離れ、若い人たちに世代交代したときに、
その若い人たちが
巨匠にこんな細かな仕事は頼めないよね
巨匠にこんなお願いしたら怒られるんじゃないか
などと、自主規制してしまう結果、巨匠に仕事がこなくなる。結果、素晴らしいデザインや技術を盛っているのにも関わらず、どんどん仕事が減っていくという現象です。
でも、森内さんには、その「自主規制しなきゃ」感が、まったく、ない。
もちろん、大巨匠だけれど、もしその仕事がいまの森内さんにとってイマイチだったら、「いや〜、それはさ、若手に頼んでよー」と、さらっと言ってくれるだろうなと思うから。
こちら側も、「や、やっぱ、そうすよね、調子乗りました! 森内さん、ほんとすみません!」のひとことで、あっさり終われる。なんのあとくされもないです。とても気持ちのいい方なんです。
そして、この、いつまでたっても大巨匠風を吹かせない、気さくな人柄こそが、森内さんのデザインがいまでもまったくこり固まってなくて、いまでも新鮮で、いまでもトップランナーである理由だと思います。
表参道のun amiがオープンして以来、お店の前でばったりお会いすることも多いのですが、近所のおばちゃんの井戸端会議ですかというくらい、ロングな立ち話になります。これがまた楽しい。森内さんは、生き馬の目を抜く東京での、心のオアシスです。
「おー、お久しぶりです、元気ー? いま忙しいの? ちょっと寄ってってよ」。そう言われて、アポもないのにお邪魔したこと、何度もあります。
ほかのスタッフさんとの打ち合わせが終わったところで呼び止められ、そのあと森内さんと話し込むこともたびたび。
森内さんの口癖は、
「で、で、最近どう?」です。
その言葉を皮切りに、最近のトレンドや、業界の傾向、これからのビジョンについて情報を交換します。
結構真面目な話もしますし、いろんな課題を相談することもあります。改めてアポをとってヒアリングといった堅苦しいものではないから、話はあちこち脱線して、それがおもしろい発見になることもたびたびです。
私は意外と人見知りだし、結構警戒心も緊張感強いほうだと思う。だから、誰と会うときにでも、それなりにちゃんとしていようと思うのだけれど、森内さんの前でだけは、いろんなバリアがなくなります。
だから、そういった森内さんとのざっくばらんなおしゃべりの中で生まれた企画も多いし、実際に誌面になって反響があったのも、森内さんの言葉にインスパイアされて作ったページだったりします。
そーゆーのって多分、私だけじゃなくて、きっとたくさんの人が森内さんの前で「素」になれるから、森内さんのもとには一番フレッシュな情報やら人やらが集まってくるんだろうな、そんな気がしています。
森内さん、また、焼き肉連れて行ってください。
-Profile-
ゆるませる人/Un ami代表 森内雅樹氏
2006年須崎、加藤両氏と共に東京・原宿に「GARDEN」設立。日本でも、類をみない200坪のサロンを成功させ、2014年新宿に自身のオリジナルブランドUn amiの2店舗目となる「joemi by Un ami」をOPEN。神奈川/武蔵小杉に初のモール出店となる「NEUTRAL produced by GARDEN 」、さらにマンハッタンウエストヴレッジへ「GARDEN New York」をOPEN。現在国内に7店舗、海外1店舗を構え、さらに、
今、業界注目のロレッタブランドをプロデュースし、今年の3月には、自身開発のJEROMEシリーズも発表。美容業界の可能性を追求し、新たに切り開いていく。
文・佐藤友美
美容サイトの草分け的存在「サンドリヨン」の編集長を経て、雑誌、書籍での執筆を重ねる。15年間にわたってヘア専門のライターとして活動し、全国各地でセミナー、講演を行う。著書に「フォトシュートレッスン」(髪書房)「美容師が知っておきたい50の数字」「美容師が知っておきたい54の真実」(女性モード社)など
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