スターを生みだす「経営者」としてのAFLOAT宮村浩気さん。ヘアライター佐藤友美がみた”美容師列伝” 第4回「任せる人」
口出したくないから見ないんだよね、の真相
2年ほど前のことだったと思います。久しぶりに宮村さんにお会いしたら、AFLOATで作ったとてもおしゃれなフリーペーパーを見せてくれました。それまでのAFLOATのイメージを一新する、ちょっとストリートっぽい要素を入れたヘアデザインが並んでいます。
「さすが、トレンドのどまんなかですね!」と言ったところ、宮村さんは「実はこれ、でき上がって初めて見せられたんですよ」とおっしゃっていました。スタッフの方々が、時代の移り変わりやトレンドの変化を敏感に察して、今までにはないデザインを作っていかなくてはいけないと作ったものだとか。
このように、AFLOATには「良いと思ったことはどんどんチャレンジしていい」という不文律があります。
これは歴代の幹部たちから若手まで脈々と受け継がれていて、だからスタッフの皆さんは、とても早い時期にカメラを学んだり、SNSでの発信を試したり、冊子を作ったり、動画を撮影したり、本を売り込んだり……と、いろんな方法で売上をあげたり集客する方法を考えてきました。
それぞれ自分たちが目をつけた方法でのし上がり、そして誰かが成功したら全員で一気にその成功事例を共有する。この自由さと競争が、AFLOATの成長のスピード感につながっていると感じます。
あるとき、営業後のサロンにお邪魔したら、何人かのスタッフさんがミーティングをしていました。宮村さんに聞くと「あ、あれは新しくオープンする新宿店の内装ミーティングです」と。「宮村さんは参加しなくていいんですか?」と伺うと「全部、まかせていますから」とひとこと。驚いたことに、新宿店がオープンするまで、宮村さんは一度も内装の図面を見ることなく、スタッフに全面委任したのだとか。
「例えば僕がひとこと、『椅子はこっちのほうがいいんじゃない?』と言ったら、それまで話合いを重ねてきたスタッフの士気が下がってしまう。まかせると言ったからには、口出ししない。見ると何かいいたくなるから、見ないようにしているんです」と、宮村さんはきっぱりおっしゃいました。
宮村さんに「まかされた人」たちは、自分の頭で考え、スタッフを巻き込み、工夫をして歩き出します。強くたくましい人材がどんどん輩出されるAFLOATさんの原点をここにみたように思いました。
デザイナーとしての宮村さんはもちろんのこと、経営者としても宮村さんの話。これからもライターとしてたくさん聞いていきたいと思っています。
-Profile-
任せる人/AFLOAT CEO 宮村浩気
2000年4月「女性を必ず綺麗にする」をモットーに、AFLOATをオープン。現在では、直営サロン5店舗、FCサロン20店舗を展開。雑誌やCM、業界誌、ヘアショー、セミナーなど、多岐にわたって活躍。タレントやモデルからの信頼もあつく、公私にわたるヘアメイクを一任されている。
文・佐藤友美
美容サイトの草分け的存在「サンドリヨン」の編集長を経て、雑誌、書籍での執筆を重ねる。15年間にわたってヘア専門のライターとして活動し、全国各地でセミナー、講演を行う。著書に「フォトシュートレッスン」(髪書房)「美容師が知っておきたい50の数字」「美容師が知っておきたい54の真実」(女性モード社)など
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