スターを生みだす「経営者」としてのAFLOAT宮村浩気さん。ヘアライター佐藤友美がみた”美容師列伝” 第4回「任せる人」
「ヘアライター佐藤友美がみた 美容師列伝」。日本全国の美容師を取材してきたヘアライターの目線から、毎回「●●な人」を紹介し、その素顔に迫る企画です。第4回めは「任せる人」。AFLOAT宮村浩気さんです。
宮村さんといえば「モテ髪」で、エアリーに舞うあのヘアデザインは、クレジットを見なくてもすぐにわかるくらい、圧倒的で特別です。
でも今回は、そんな宮村さんの「経営者」としての顔について書きたいと思います。
カリスマ美容師ブームの時代に活躍された方々のサロンで、いま、最も店舗数が多くさまざまな展開をしているのは、AFLOATさんじゃないでしょうか。
AFLOATは、幹部が全然辞めないサロンです。私は13年くらい前、AFLOATでスタイリストデビューする人たちの初撮影を担当させてもらうことに命をかけていた時期があるのですが(3ヶ月に1回くらいのペースで、続々スタイリストさんがデビューしていました)、そのとき初撮影をご一緒させてもらった人たちが、いまでもほぼ全員サロンに残っています。
そしてそのそれぞれが、AFLOATの名前で新しくサロンを出したり、銀座や青山のサロンの代表をつとめたりしている。まさに、エースが次々と輩出されるサロンだなと感じます。
これが、宮村さんはデザイナーとしてオンリーワンなだけではなく、経営者としても一流なのだと考える部分です。
- 売れる美容師を育て
- スタッフを指導できる幹部を育て
- 店を牽引できる経営者を育てる。
この3つの全てを、宮村さんはとてもしなやかに、自然体で行っているように(はたからは)見えます。
ではどうしてAFLOATでは人材が育っていくのでしょうか。
その秘密のひとつは、宮村さんの教育方針にあると思います。
宮村さんは、ちょっとびっくりするくらい「まかせる人」です。カリスマブーム時代、撮影をご一緒させていただいていたときは、よく「僕ではなくて、若手を使ってあげてくれませんか?」と聞かれました。
それだけではなく、ご自身の撮影現場でも、アシスタントさんやデビューしたてのスタイリストさんに、できるだけチャンスを与えていました。ヘアメイクもどんどん若手にまかせ、後戻りできないポイントからは自分が手を動かす。撮影現場ではそんなシーンをよく見ました。
だから、AFLOATのメンバーは、いつでも宮村さんの手元を食い入るように見つめています。いつ自分にチャンスがまわってくるかわからないから。チャンスがきたときに、いつでも活躍できるように、普段から絶対ぼーっとしていることがないのです。いつでも「自分がやるなら……」という目線で、師匠の仕事を見ています。うまくならないはずがありません。
若いスタッフに思い切りストレッチのきいた背伸び仕事をまかせるので、ときには失敗することもあったでしょう。そういうときは、宮村さんが必ずお詫びを入れにいらっしゃいます。そして「頑張らせますので、またぜひチャンスをください」と深く頭を下げられるのです。
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