高木琢也さんに聞く! 消費の時代にOCEAN TOKYOが流行で終わらない理由を徹底検証。高木琢也編【連載企画Vol.4後編】
超特化型美容師がウケる時代の今、飽きられるかもしれない危うさもある
――最後に、選ばれる美容師で居続けるためには、どうしたらいいと考えますか?
飽きさせないこと。それがすべてだと思います。
先程の話にも通じますが、いい意味で期待を裏切り続けたい。マンガでも、ヒーローがピンチに陥るからこそ、応援する気持ちになるし、そこから更に強くなるじゃないですか。だから人気が続くわけで、OCEAN TOKYOも同じように、飽きさせたくない。そして、そのときのヒーローは俺じゃなくてうちのスタッフでありお客さまです。
今は超特化型の時代で、俺もスタッフにはよく「とにかくなんでもいいから日本一になってほしい」と言うんです。鏡を磨くのが日本で一番得意、でもいいし、トイレ掃除が日本一得意、でもいい。スタイルでいうと、雨宮はセンターパートが得意だし、陽介はメンズとレディースの二刀流という看板がある。フェード×クレイジーカラーといえば七五三掛だし、美容師をやりながらみんなをまとめ、商品開発までできるのは日本中どこを探しても三科しかいない。そういう風にみんな何かしらに特化していて、それが強みでもあるんだけど、やりすぎは禁物だと考えています。
じゃあどうすればいいかというと、選ばれ続けるには、変化していかないといけない。
美容師がそれをできる一番簡単な方法が自分の髪型を変えること。去年と全く同じ髪型、変化していないスタイリストをお客さまが選ぶだろうかと考えてみてほしい。髪型に悩んでいるお客さまは多いけど、スタイリストも、俺だっていつもめちゃくちゃ悩んでいます。いつも同じ髪型しているのは良くないと思う。だって、急にモヒカンにしたり変な髪型にしたら、「どうしたの!? その髪型」って来店したお客さまに言ってもらえる。それだけで楽しいじゃないですか。
洋服も一緒で、いつも白いTシャツとジーンズだったら見ている人は楽しくない。 SNSも同じです。髪の毛のことだけ上げるのもいいけど、俺はそういう美容師っぽい投稿はあんまりしません。趣味とか着ている服、食べたものの写真ばかりで、本当に仕事しているのかと思われるInstagramかもしれない。でも、お客さまとの距離感が遠くなってしまわないように、フランクなポジションでいることは気をつけています。
あちこち色々な場所に行ったり、高級なものも食べればファストフードも食べる。そうやって変化やアップデートを続けていかない限りは、選ばれる美容師になれないんじゃないかな。
特化型の美容師が流行っているから、技術も一つを定着させようと考えるかもしれないけど、大切なのは定着じゃなく変化だと俺は考えています。
- プロフィール
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OCEAN TOKYO
代表/高木 琢也 (たかぎ たくや)
千葉県出身。早稲田美容専門学校卒業。都内1店舗を経て2013年9月にOCEAN TOKYOを立ち上げ、現在は原宿、渋谷、大阪など8店舗を展開。月間技術売上1200万円を達成、ホットペッパービューティーアワードベストスタイルメンズ部門三連覇をするなど業界でも注目を浴びる。2018年10月にNHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演後、本田圭佑に次ぐ二人目の二度目の出演者として2019年5月に再登場。現在は4度の出演を果たしている。2019年5月22日にはじめての著書「這いつくばった奴が生き残る時代道あけてもらっていーすか?」(宝島社刊)を上梓。カミカリスマアワード2022、2021、2020(主婦の友社)では、メンズカット部門で唯一の三つ星を3年連続で獲得した、業界の圧倒的カリスマ美容師。
(文/須川奈津江 撮影/菊池麻美)
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