OCEAN TOKYO中村トメ吉さんが語る、若者を成長させる方法

新人に対して「2カ月間は怒らないで泳がせる」

 

 

では、お刺身コースの教え方にするのか、ムニエルコースの教え方にするのか、個人の資質や性格を見極めるのにどうするのかというと、入社後2カ月間は怒ったりせずに自由にさせるんです。

ただでさえ新しい環境での中で気を張っているぶん、調子に乗らせないとその子の素は見えてこない。自分を出してもらい、それをこちら側がキャッチするからこそ、その子の良さや駄目なところもわかってくる。どうしても若者は自分を良く見せたり大きく見せたり、違う自分を見せようとしますから、そうするとこっちもわからなくなってしまう。なので、しばらくは怒るのは禁止で、とりあえず自由にさせ、だんだん表の皮を剥がそうという作戦です。そうすると、分析しやすくなります。

 

新人とフラットな関係を築くには「人として興味をもつ」

 

 

若手の育成に、過去の成功事例や固定観念、プライドは不要で、僕はきちんと「人と人」として向き合うことが大事だと思っています。僕は経営者というポジションですが、アシスタントとは業務内容が違うだけで、動いている時間は一緒です。だからこそ、下に見るのではなく、フラットな関係であることが大切です。

仕事という場を共有している以上、仕事ができる・できない、早い・遅い、丁寧・雑、など仕事という観点で人を見がちです。そうすると、下の子も上司に対して仕事ぶりでしか判断しなくなってしまいます。

 

でも、そこを一旦切り離して、単純に人としての興味を持つと面白いじゃないですか。その人の性格やバックグラウンドを知ることで、「だから今こんな風になったんだ」「だからこういう考え方になったんだ」ということがわかる。それがわかってはじめて伝えるべきことやそれをどう表現するかがわかる。それはお客さんに対しても同じで、まず人生や心をデザインするお手伝いをしたい、それを叶えるために技術っていう武器を備えていくという考え方です。

 

まずは「人に対して興味をもつ」こと。若手だけでなく、何に対してもこの一本の筋が通っていると、いろんな成功につながっていくと思います。

 

『若手を動かせ』 中村トメ吉著 エイ出版社

 

 

プロフィール
1984年、栃木県生まれ。都内の美容専門学校を卒業後、25歳で都内有名店の店長に就任。就任後「店舗売上」を2倍に、メンズ雑誌の「行きたいサロンランキング」1位、「スタイルランキング」年間1位と実績を積み、人気サロンへと押し上げた。2013年に高木琢也氏と共同経営でOCEAN TOKYOを立ち上げ、前店の同僚だった三科光平氏を加えた3人で有名店に成長させる。サロンの経営・プロデュース・戦略・マネジメント・人事など「経営部門」を主に担う。

 

 

(取材・文/須川奈津江  撮影/泉山美代子)

 

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