老いを超越して艶やかな輝きを手に入れる。最高齢96歳のファッションショー「Make Over Magic」開催
カラフルでハッピーなドレスが高齢者に自信を与える
当初から前回まで、松尾さんの個人的活動の一環で開催していたそうですが、今回からはじめてチャリティイベントとして実施。松尾さんの理念やショーの意義に共感する30名が、ボランティアとして参加して協働で創りあげました。
「“独特”“希望”“光り輝く”といった言葉から連想する色を使うことを前提に、ドレスやメイク、ヘアメイクは協力してくれるプロたちとチームでコンセプトを煮詰めています。『日本の高齢者は絶対に挑戦しない強烈なカラーとデザイン』はブラさずに、品よくまとめていくことを大切にしてるんです。インターナショナルで活動していると、日本人のファッションって、綺麗でまとまっているけど、大胆さとか色の使い方がもっと派手にすればいいのに……と感じました。ヨーロッパやニューヨーカーのように、カラフルでファッショナブルな装いならではのエネルギーを表現していきたいと思っています」
女性モデルの多くは普通の主婦や子育てを頑張り、ごく普通の人生を歩んできた高齢者たち。なかには、パートナーとの死別や自身の病気との闘いといった悲しみや苦しみと向き合ってきた人も。決して脚光を浴びた人生ではありませんが、煌びやかな衣装とメイクを纏い、ショーの舞台に立つことで気分が高揚している様子が観客を勇気づけます。
「モデルなんてとんでもない」と及び腰だった人も、3回も出演したというから、松尾さんの目論み通り、ショーがもたらす効用は絶大なようです。ヘアメイクやファッションがなぜここまで高齢者を元気づけるのでしょうか。松尾さんは次のように考えています。
「ファッションは自信をもたらす効果があるはず。たとえば入院生活を送られている方に、ヘアカットやヘアメイクをして差し上げると、とても元気になります。若いときは結婚や出産、子育てなどライフイベントがたくさんあって、光も当たりますよね。でも年を重ねるとどんどん『自分なんて』と卑屈になってしまいます。でも、こうしたショーをきっかけに、メイクした姿に自分自身が驚いたり、声援に自信をもらったりことで、『年齢なんて関係ない、明るく生きよう』と思える、ファッションはそうしたエネルギーを呼び起こすと信じています」
ショーの総合MCは生涯現役リポーターとして活躍する東海林のり子さん(83歳)を迎え、ポジティブオーラ全開のマダム路子さん(77歳)のトークショー、さらには松尾さんのミニヘアショーや、そして魅力学(R)研究家の中原晴美さんとの対談など、見どころたっぷりの1時間半のステージでした。
今後は個人活動の枠を超えて、企業や支援者、ビューティビジネスに関わる人たちの賛同を得て、活動を全国に広げることを目標にしていくと語る松尾さん。日本の高齢者が明るく美しく彩りある姿に変身していく、そんな未来はそう遠くなさそうです。
(取材・文/末吉 陽子)
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