Lilyさん、どうして働けない高校生に教えているの?
「この人と一緒にやりたい」と思えないと教えられない
-寺村さんはどんなスタンスで教育をしているのでしょうか?
寺村さん:僕はやる気がない人をやる気にさせることって無理だと思っています。会社に何かを期待したり、給料や休日で職場を選んだり、何かを求めてばかりの人は育てられない。教育って教える側の時間と労力がかかることだから、「この人と一緒にやりたい」と思えるような相手でないとできないです。
また、基本的に僕がイチから手取り足取り何かを教えることはありません。厳しい言葉に聞こえるかもしれませんが、自分から学びたいという人にしか伝えられることはないです。もちろん、教えてほしいと言われれば、いくらでも教えます。ですが、僕もたくさんのお客さまがいるので、教育に使える時間は限られています。いつでも教えられるわけじゃない。
だから、たとえば「一週間後のこのタイミングだったら時間をつくることができるよ」と伝えるんです。すると、教えられる側もその1週間の間に準備をして、その時間を最大限有効に使おうと思いますよね。こんな風に、やる気がある人のやる気をさらに引き出し、成長できるような教育を目指しています。
知識や技術よりも身につけてほしいこと
-高校生のうちから美髪アドバイザーの知識や技術を学べるのはかなりのアドバンテージだと思います。
寺村さん:僕が伝えたいのは、知識や技術ではなく、「考え方」の部分です。これは京セラの稲盛和夫さんの言葉ですが、「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」と考えることができます。
能力はビジュアルとか地頭の良さとかそういうもの。熱意は目的達成のために時間と労力を投資できるかどうか。その二つに「考え方」をかけるわけですが、考え方がマイナスだと、どれだけ才能があって努力できる人でも、結果を出せないという意味です。
-「考え方」とはどのように伝えるのですか?
寺村さん:たとえば、ミスをしても自分を正当化しないとか、そういうこと。僕も昔そうだったのですが、悪気がなくてもお客さまに迷惑をかけたらそれはミスじゃないですか。その後、同じ失敗をしないように行動を変えないと進歩しません。
本来あってはならないですが、僕が忙しすぎてお客さまを待たせてしまったとします。その間に、シャンプーをアシスタントにお願いして、素早くあげてもらえたとしますよね。アシスタントは一生懸命やったんですが、髪が濡れたまま待たされるお客さまは不快です。そこで僕が「シャンプーのスピードが速すぎるよ」と責めたら、アシスタントは「速くシャンプーしたのになぜ?」と腑に落ちないでしょうし、「次はもう少しゆっくりにしよう」と間違った捉え方をするかもしれない。自分の技術がうまいかどうかしか考えていないからこうなるんですね。
同じ状況でも、アシスタントの考え方が「お客さまファースト」になっていれば、「お待たせすることになって本当にすみません。ただお待たせするだけでは申し訳ないので、マッサージさせてもらってもいいですか?」と伝えられるかもしれない。そうすると、お客さまが待つ時間の意味が全く違ってきますよね。これが理想。普段からお客さまのことを考えられるようになれば、そういう行動ができるし、その積み重ねで結果も出ると思うんです。