「美容業界=LGBTフレンドリー」ではない。美容室に必要なのは想像力だ ―グッド・エイジング・エールズ松中権さん|美容室とセクシュアル・マイノリティvol.1
オーナーの役割はシンプル。「自分の周りにもいるかもしれない」がはじめの一歩
—LGBTの人たちが働きやすい職場を作るために、オーナーにできることは何ですか。
どんな職場でも同じですが、「自分の職場にもいるかもしれない」と意識することがはじめの一歩です。職場に当事者はいなくても、スタッフの兄弟や友だちがそうかもしれません。LGBTをネタにする空気があると、そのスタッフも嫌な思いをしてしまいます。
オーナーにできることはシンプルで、スタッフが差別的な言動をしていたらきちんと注意することです。職場の環境はオーナーの意志やキャラクターで大きく変わっていきます。「ネタにしたり、差別したりするのはやめよう」とスタッフにはっきり言えるのは、権限のあるオーナーだからこそできることです。
—LGBT当事者のスタッフに対しては、具体的にどのような配慮があるといいのでしょうか。
まず、LGBTかもしれないスタッフにカミングアウトを強要したり、他のスタッフに勝手に言ったりしてはいけません。カミングアウトしても問題ない職場を目指しながら、カミングアウトするかどうかは本人に任せるべきです。
トランスジェンダーの方の場合は、オーナーの方の配慮があると心強いです。例えば、自分が男性から女性へ性別の移行が完了した場合、そのことを職場では隠したい人もいれば、オープンにしたい人もいます。人によって違うので、きちんと話を聞く必要があります。そして、美容室だとお客さまから「女性の美容師さんでお願いします」と言われることもあるかもしれません。そのとき、スタッフの性自認が女性なのであれば、女性として扱うようにしましょう。
また、男性として入社したけれどこれから女性に移行していく場合など、性別の移行が完了していないケースでも、周囲のサポートは特に重要。ホルモン治療によって体が変わっていくタイミングだと、体調を崩しやすいのでしっかりケアしてあげる必要があります。
―スタッフに配慮の意識はあっても、説明されていないお客さまは違和感を覚えるかもしれません。そのときはどうしたらいいのですか?
本人が望むなら自分でお客さまに説明をしてもらいつつ、オーナーはトラブルがないように見守るといいと思います。事前に伝えてくれたほうが楽という場合はオーナーが代わりに説明をしてあげるといった配慮も必要です。
>LGBTフレンドリーな美容室を目指すために必要なこととは?