「新規を獲得しなくても安定経営できる方法」―顧客ゼロから出発したサロンが今、「完全会員制」で成功しているわけー
独立してヘアサロンを構えても安定経営できるのは一握り。独立を避けてフリーランスになる美容師さんも増えています。そんななか、「完全会員制」でお客さまから愛されているサロンが東京・麻布十番にあります。その名は「La Virtue」。オーナーの増田祐太さんいわく、「新規に頼らず顧客を大事にすることで成り立つ新しい経営方法」があるそうです。完全会員制サロンという経営スタイルに行き着くまでの軌跡と、成功メソッドをうかがいました。
サロンの期待を背負う血気盛んな九州男児
専門学校まで長崎で過ごし、卒業後は静岡にある美容室に入りました。20代前半の僕は、血気盛んな九州男児。勤めていたサロンのグループ内で最優秀新人賞を獲得したり、ヘアコンテストで入賞したり、ヘアショーの総監督をさせていただいたりと、目立つ若手だったと思います。ところが、人間関係のもつれがきっかけで退職をすることに…。半年間ほど美容を離れましたが、「このままではいけない」と一念発起。ロンドンのヴィダルサスーンアカデミーで学んだ後に上京し、再び美容師に復帰しました。
新しい環境では、トップスタイリスト、サロンディレクター、アートディレクターと順調にステップアップし、指名客数も、売上も伸ばすことができました。その一方で、「数をこなす仕事の仕方」に疑問を感じるように。退職後、上質なサービスを提供する高価格帯のサロンの手伝いをしたこともありますが、そこでも自分の思い描いていたものとのギャップがありました。だから「これは自分でやるしかない」と思い、サロン立ち上げの準備をすることにしました。
ちょうどそのころ、異業種の経営者の会に参加して勉強をしており、メンバーの方から「いい物件があるので見られませんか?」と言われて見せてもらったのが、麻布十番にある今のサロン。土地勘もまったくない場所なのに、一目ぼれして決めてしまったんですよ。
月1回の贅沢が一蘭のラーメンだった貧乏時代を経て…
1000万円の借金をつくり、La Virtueをスタートさせました。ところが、最初は顧客0人。文字通りゼロからの出発で、初月の売上は25万円という厳しい結果でした。お金がないので妻と二人で神奈川の1Kに住んでいました。通勤は往復で2時間。朝10時から22時まで営業。連休は年末年始の3日のみで、早い日は朝6時に店をあけることも。お昼ご飯は妻が握ってくれたおにぎり。唯一の贅沢は月1回食べる一蘭のラーメンでした。
それでも、ポスティングとホットペッパーの最低料金プランで月30名から50名の新規客を獲得。ドライカットの技術を学び、平均の単価も1万円までアップしました。鍛錬を重ねるほど単価も売上も伸びていき、やがて月間総売上が200万円以上に。オープンから約2年で1000万円の借金を完済しました。